SPECIAL

OUTLINE 概要

株式会社エムアイセブンジャパン様のPart 2。画期的な機能を持ったAustrian Audioのマイクロフォンをご紹介。
2019年12月16日収録

SECTION.1 収録後も指向性を変えられる Austrian AudioのマイクOC818

登井 萌水

次に、エムアイセブンジャパンが新たに取扱いを始めたAustrian Audioのマイクロフォンをご紹介します。

吉田 保

このマイクは、私もレコーディングでデモ機をお借りして試させていただきました。

登井 萌水

Austrian Audioは、開発メンバーの多くがAKG出身で、エンジニア全員のキャリアを足したら335年とのことでした。不思議な数え方ですよね(笑)。ただ、それだけマイク開発のノウハウやテクニックを持ったメンバーが立ち上げたブランドであることに、疑いの余地がありません。

 現在のラインナップは、OC818とOC18の2モデルです。どちらもCKR12というハンドメイドのカプセルが使用されています。このカプセルとボディを繋ぐサスペンションは、衝撃をいなす素材でできており外からの干渉が大きく軽減します。カプセルはセラミックボディを採用しているなど各パーツの耐久性が高く、安定した性能を長くキープできるというのも、一つの魅力です。また、すべての個体の個体感度差は1dB以内となっていまして、「マッチドペア」という概念がありません。どの個体を使ってもマッチドペアとしてお使いいただけます。OC818は、ダイアフラムが表と裏に2枚あり、無指向から双指向まで連続可変になっています。コントロールはBluetoothに対応していて、AndroidまたはiOSを使って遠くからでも指向性の制御をすることが可能になっています。例えばオケの録音でマイクを吊ってしまうと、後から指向性を変えるのは大変ですよね。他にもマイクをスタジオ・ブースに立てた後、コントロールルームから自由に指向性を変えられる、といった使用用途が考えられます。

 さて、このOC818最大の特徴が、録った後でも指向性を変更できるプラグインPolerDesigner(VST、AU、AAX)です。裏側にあるミニキャノン端子にケーブルを取り付けて、1本のマイクから2chを出力していただくことによって、この機能を使用できるようになります。さらに、このプラグインには周波数帯域を5つに分けて指向性をコントロールする機能があり、例えば、低域は無指向で、高域に行くにつれてカーディオイドに寄せていく、というような事もできます。市場想定売価は、OC818が13万円(税別)、プラグインは無料。OC18は、9万円(税別)で単一指向性のみ、こちらはプラグインを使うことができません。以上が、Austrian Audioの概要となります。

 このOC818は、森元さんにお使いいただいたのですが、いかがでしたでしょうか。


森元 浩二

すごく良かったですよ。いまはピアノ、アコギ、ベース・アンプなどに使っています。特にピアノは良かった。僕はAKG C414をメインに立てるんですが、強く弾く人だと、ハンマーで弦を叩いたところでジジって歪むんですが、それがないので良かったですね。あと使っているうちにどんどん良くなってきて、育つもんだなと(笑)。AKG出身の技術者が興した会社なのですが、あまりC414との関係を言わない方が良かったと思うくらいです。まったく別のマイクとして、とても良いマイクです。僕はそんなイメージを持ちました。

北川 照明

良くなってきたというのは、使用を重ねることで森元くんのイメージが変わったということ?

森元 浩二

良くなってきたというのは、エージングってあるんだなって思ったことです。

吉田 保

エージングはあると思うよ。

森元 浩二

ええ、ローンチイベントを手伝うために色々と試したんですけれど、その時はマイナス・イメージもあったんですね。いまはそのマイナスが減ってきて、本当に良いイメージしかありません。みなさんはベース・アンプに何を使っていますか? ついNeumann U47fetを使っちゃうじゃないですか。それが、僕はOC818を使うことが増えましたね。ラインとの混ざりもいいし、今後はベース・アンプ推しで行こうかなと。

吉田 保

C414みたいに低域がちょっとブーミーというところはない?

森元 浩二

ないですね。

北川 照明

ヴォーカルはどう? 吹かれはどうかな。

森元 浩二

ヴォーカルは好みでしょうね。すごく良いという人もいます。吹かれは、グリルの網がよく出来ていて、ウインドスクリーンがなくても吹かれないんです。

吉田 保

それはいいね。

北川 照明

使いたくなるね。

森元 浩二

単一のOC18も、気に入った人がいてヴォーカルに使っていますよ。

吉田 保

ゲイン的には?

森元 浩二

ゲインは、C414に対して4dBくらい低いです。

吉田 保

それは新しいマイクの特性的な部分だね。

森元 浩二

もう一つ。OC818のプラグインを使うと録った後でも指向性を変えられるんですが、使ってみると指向性でこんなにも音が変わるんだと。今まで知らなかったような音がします。ピアノのオンなんて、つい単一指向性にしちゃうじゃないですか。ところが、実は無指向のほうが良かったり、無指向と単一の中間辺りがよかったり。あとはこのプラグインは、可聴帯域を5バンドに分けて、指向性が変えられるところが画期的です。

吉田 保

画期的だよね。

森元 浩二

弦楽器を録ったあとで、指向性を変えると、まったくヴィオラが聴こえなくなるとか、チェロが聴こえなくなるとか。

吉田 保

かぶりの問題だね。

森元 浩二

そうなんです。スタジオの響きってこんなに重要なのか、マイクを立てる位置で響きの反射がよくわかるんです。指向性を調整すると、どこまで他の音が録れているのかわかり、すごく勉強になりました。これが録った後でも調整できるので、エンジニア的にはすごい楽。失敗が少なくなると思いました。

下川 晴彦

オーディエンス・マイクにも最高だね。

森元 浩二

かぶりが調整できるので、最高だと思いますよ。

岡部 潔

普段、自分が立てている場所から変わった?

森元 浩二

それはいままでとほとんど一緒です。吉田さんもOC818を試されましたが、ちょっと地味な音と思いませんでした?

吉田 保

ちょっと地味な感じはありました。

森元 浩二

いま僕の持っている個体は、その地味な感じが払拭されていまして、これがエージングなのかと。

吉田 保

かもしれないね。このマイクは最先端を行く近代的なマイクロフォンだね。指向特性が後からでも変えられる。いろんな選択肢ができるということは良いけれど、それだけ使いこなすのは大変かもしれないな。

下川 晴彦

さっきの吊りマイクの話と一緒で、後で変えられるのは良いね。

吉田 保

吊りなんか一回場所を決めたら、なかなか直せないものね。

下川 晴彦

吊りはよく直しましたよねー、吉田さん(笑)。

北川 照明

そこは“直させられました”と言いたいよね(笑)。

吉田 保

最後に今後の展望を。

登井 萌水

いまみなさんにご提案させていただいた製品が、弊社の新製品となります。Austrian Audioを始めとして、弊社は最先端の製品を多く取り扱っていると思います。また、ネットワーク・オーディオの規格も多く、今後、主流となる企画がひとつに絞られるまでにはまだまだ時間が掛かると思います。Appsys ProAudioはその中で、マルチで自由にルーティングを組むことができる。そういった痒いところに手が届く製品となっております。どの規格を採用すべきか迷っている方がいらっしゃったら、ぜひお声がけください。また、Dolby AtomosやAuro-3D、Ambisonicsなど立体音響についてもエムアイセブンジャパン・グループ全体で取り組んでいます。

吉田 保

ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第4回座談会は、「2019年の総括と今後に向けて」と題し、オタリテック株式会社様、株式会社エムアイセブンジャパン様に取扱いブランドの製品をご紹介いただきました。
新製品に限定しなかったことで、すでに使用した感想なども聞くことができ、とても興味深い内容となりました。

次回座談会は、準備が出来次第掲載いたします。