SPECIAL
OUTLINE 概要
「JARECについて」をテーマに座談会を行いました。
最初の議題は「著作隣接権の獲得について」。JARECが発足した20年前より、音楽の形態が変化し、エンジニアを取り巻く環境も変わりつつある中、それぞれの思いを話していただきました。
2019年6月12日収録
SECTION.1 著作隣接権の獲得について
吉田 保
2018年4月に日本ミキサー協会は、特定非営利活動法人(NPO) 日本レコーディングエンジニア協会(JAREC)に移行しました。そこで新JARECが“今後、どんな活動をしていくのか?”をテーマに議論したいと思います。 最初に1999年日本ミキサー協会発足時からの目的だった“実演家としての著作隣接権の獲得”。これは新JARECでも、活動の主軸になると考えていますが、この点を皆様はどのようにお考えでしょうか? ※ 日本レコーディングエンジニア協会HP「私達は何を求めているのか。https://jarec.com/what-we-want」を参照
森元 浩二
日本ミキサー協会発足から20年。サウンド・エンジニアの立場や音楽制作スタイルは大きく変化しました。確かに権利獲得は大切ですが、私はJARECの最終目標として、サウンド・エンジニアとして働くようになったらJARECに必ず入会するというようなアメリカのユニオンみたいな存在になれれば良いと思っています。もちろん、入会することで様々なメリットが得られるようにする必要はあるでしょう。
吉田 保
著作隣接権を獲得すれば、二次使用料などの分配金が受け取れるようになりますが、その金額はわずかでしょう。それよりも、私が期待しているのはサウンド・エンジニアを取り巻く状況やレコーディング・エンジニアという立場の変化です。そのためにも著作隣接権の獲得に5割くらいの力を注いで行きたい。その時、一般社団法人 日本音楽出版社協会(MPA)や一般社団法人 演奏家権利処理合同機構MPNといった団体の協力も仰ぐ必要があると思っています。著作隣接権を獲得すれば、二次使用料などの分配金が受け取れるようになりますが、その金額はわずかでしょう。それよりも、私が期待しているのはサウンド・エンジニアを取り巻く状況やレコーディング・エンジニアという立場の変化です。そのためにも著作隣接権の獲得に5割くらいの力を注いで行きたい。その時、一般社団法人 日本音楽出版社協会(MPA)や一般社団法人 演奏家権利処理合同機構MPNといった団体の協力も仰ぐ必要があると思っています。
川澄 伸一
確かにCDの販売数は年々減っていますが、それは配信という別の販売形態になっただけで、制作されている楽曲数はそれほど変わっていないと思います。ダウンロード配信は、基本的には定価なので分配もわかりやすい。しかし、ストリーミングやサブスクリプションになると、どのように利益分配をすれば良いのか。そこがまだはっきりしていません。
森元 浩二
今の販売形態だと、作家が得る報酬はいままでの10分の1だと知り合いの作家が言っていました。確かに単価が安くなっていると私も感じています。 初めてのアーティストと仕事をする前に資料として音楽を聞くことがあります。その際、ハイレゾ音源がダウンロード販売されているのなら、少しでも音の良いものを選ぶ様にしていますが、普段移動の時などにヘッドフォンで音楽を楽しむにはストリーミングで十分ですからね、ハイレゾを買うまでもない。
吉田 保
ハイレゾ音源は高いんですか?
森元 浩二
ストリーミングと比べたら高いですが、それでも3,000円くらい。CDアルバム1枚分ですよ。
北川 照明
私がJARECに求める役割は、吉田さん同様“著作隣接権の獲得”です。この獲得運動は、日本ミキサー協会が発足した理由なので、7割から8割くらい力を入れてもよいと思っています。発足当初は、著作隣接権を獲得できる可能性がかなり高かったんです。その時に獲れていれば、それ以降の作品に対して我々にも分配金を得る権利がありました。 確かに実入りは少ないでしょうが、まずは設立目的である著作隣接権獲得を目的にした活動を続ける。それがJARECの目標であるし存在理由だとも思っています。この目標が達成できれば、これからの若いレコーディング・エンジニアの満足度にも影響するのではないでしょうか。 ただし、この20年間、様々な要因で八方塞がりになっているので、現状を踏まえて、どうやったら獲得できるのか、NPO法人になったいま、どうやって攻めたら獲得できるのか、改めて考え直すよい機会だと思います。
吉田 保
そうすると、まずは関係省庁に我々の訴えを理解してもらう事が第一でしょうね。音楽に関わるに様々な人や団体に意見を求めることで、獲得への突破口を見出したいよね。
北川 照明
以前、我々の求める権利獲得に必要となる法律について勉強会をした事がありましたよね。その時、講師としてお声を掛けた方も、最初は「いまの状況で獲得は難しい」といっていましたが、「もしかしたら可能性があるかも」とも言っていました。攻め方次第で獲得できるのではないでしょうか。
浜田
日本で著作隣接権に関わる分配金に関しては、公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が中心になって決めています。わかりやすく言えば、芸団協にサウンド・エンジニアの立場を認めてもらえれば先に進めます。
森元 浩二
そうすると、文部科学省などに請願する必要はないんですか?
浜田
直接は関係ありません。日本ミキサー協会も、最初は一般社団法人 日本音楽スタジオ協会(JAPRS)の分科会でしたよね。その時、私は理事だったので、著作隣接権について聞いたら「芸団協で認められれば良いですよ」と。「音楽関係ではどんな団体が芸団協に入っているのですか?」と聞いて、日本作詞家協会、日本作曲家協会などをまわって話をすると「商業音楽の制作では、確かに大切な職業ですから、著作隣接権を持つのは良いですよ」と言ってくれるんです。そういったお話を経て「あとは芸団協から正式に実演家として認めてもらえれば良いですよ」と。そこまで話が進みました。ところが、「じゃあどうすれば、芸団協から正式に実演家として認めてもらえるか?」となると、「うーん…」となり、結局そのまま20年が経ってしまいました。 それからの20年間、いろいろな人脈や、理事長だった大野 進さんがサウンド・エンジニアから集めた嘆願書を出したじゃないですか。でも、うまくいかなかった。我々には政治力が足りなかった。
吉田 保
確かに足りなかった。
森元 浩二
かつての方法でうまくいかなかったのであれば、NPO法人となったいま、改めて著作権に詳しい弁護士に相談するのはどうですか? 著作隣接権獲得のために必要な事をまとめて、スタートを切る。
吉田 保
そういう事も必要になるでしょうね。著作隣接権獲得は、NPO法人になった今後も最も大切な活動として取り組んでいきたいと思います。