SPECIAL

OUTLINE 概要

第2回座談会「ファイルネームについて」を4回に渡り掲載いたします。
スタジオごとのルールやエンジニア自身のルール、分かりやすくしておくことが大事。
2019年7月23日収録。

SECTION.1 OKテイクを見失わないネーム

吉田 保

今回は“ファイルネーム”をテーマに話し合います。最初に、みなさんが使用しているDAWは、Pro Toolsが多いと思うので、それを基本として話していきます。その他のDAWでは、同じ機能でも名前が異なる事がありますので注意してください。  まず、レコーディングでは、我々エンジニアではなくアシスタントが、トラック・ネームを書く事が多いと思いますが、不都合な点はありますか?

川澄 伸一

不都合はないです(笑)。ただし、スタジオごとに「私達は、このようにネームを書いています」というルールはありますね。

吉田 保

セッション・フォルダに入っているトラック・ネームは、エディット時に書き換える事は結構あるよね。そういうのって、みんなはどうしているんだろう。

川澄 伸一

アシスタントさんがしっかりと書いてくれるという気持ちは充分にわかるのですが、なるべく短い名前にしてほしいかな。でも、きちんとしたトラック・ネームになっているのでOK。エディット/ミキシング前に自分の扱いやすいように、ネームを書き換える場合もあります。

千阪 邦彦

アシスタントがレコーディング時に書くトラック・ネームは、例えばヴォーカルならVoといった、ある程度のルールがあったりするんですか?

下川 晴彦

マルチ・テープのトラック・シートの書き方が、そのまま反映されていると思います。

山口 照雄

あとはエディット/ミキシング時に、テイクの間違いがないように、Take1、2、3、4と増えていくとき、トラック・ネームは01、02、03と付けていく。そして、レコーディングの音源をもらう時、必ず頭の0を消したものが来るようにするか、こちらで0を省く。これも1つのルールにしています。

川澄 伸一

プレイリストですね。

山口 照雄

そう。エディット/ミキシング中にテイク4がOKなのに、3が出ているかもしれない。きちんとOKテイクに手を加えているのか、これを間違うのは非常に大きな事故です。それが起きないよう、数字を消したものをドンと上に作っていくんです。その裏のプレイリストにはTakeの1、2、3とある。スタジオではそれをアシスタントが必ずやってくれる。

北川 照明

その時、我々は一番上にあるものが、OKテイクだと信じるしかなくなるんだよね。

山口 照雄

そう。僕もここは非常に神経を使います。もちろん、99%はきちんやってくれているんだけど、たまに「あれ?」ということがある。

北川 照明

人のやることですから、間違いはあるものね。

山口 照雄

だから、何時に終わっても家に帰ったら、必ずファイルを開く。それでOKだと思ったら寝る(笑)。

北川 照明

偉いねー(笑)。

山口 照雄

習慣だから、それをやらないと寝られない。もちろんアシスタントを信用しているんだけど、念押しという意味でね。  イノ(猪俣)ちゃんに聞きたかったのは、セッション・フォルダを開いて、ファイルやフォルダのネームを見て、「どうなっているんだこれは?」と思うことがある?

猪俣 彰三

それはないですね。150ボイスもあるようなものだったら、別ですけどね。ふざけんなって思っちゃう(笑)。

山口 照雄

レコーディングを終えて、「後はよろしく」となる前のマスターの吐き出しは、誰がやるの?

猪俣 彰三

私に依頼するアレンジャーは、全部できる人なので。

山口 照雄

その人がやっているんだ。

猪俣 彰三

そう。僕がヘタに入って、手を煩わせることもあるから、レコーディングを終えたら「後は任せるよ」とセッション・フォルダを渡します。だからネームは、スタジオのアシスタントに任せているから、どう書いているのかはわかりませんね。

下川 晴彦

スタジオによっては、テイクを変えた部分だけクリップ(旧リージョン)の背景色を変えて、アシスタントがわかりやすくしてくれる場合もあるね。「ああ、ここで叩いたんだな」というのが、見た目でわかるし、どこから持ってきたというのもわかる。

山口 照雄

どのアシスタントでもトラックやクリップの色を変えてくれるんだけど、ヴォーカルが10テイクあったら色を全部変えてくれています。私も見るだけでテイクかわかるように、アシスタントがまとめてくれると非常に嬉しい(笑)。

千阪 邦彦

そういう音源やテイクの管理などを学校では、どのように教えているのでしょうか。

脇田 貞二

ヴォーカルやその他の楽器も、“カラーパレット”を使うことでトラックやクリップが見やすくなるとしっかりと教えています。また、エディット時や受け渡しで間違いが置きないようにするには、という事も教えています。

山口 照雄

テープ時代は、どのトラックにどの音が入っているかを書くトラック・シートがありましたよね。でも、紙だからポイしちゃっているかもわからない。いまは色を見たりトラック・ネームでわかるからディレクターとの会話が楽になりました。

千阪 邦彦

いま、トラックとクリップの背景色を変えるというお話が出ましたが、例えばドラムは青とか、そういうルールはあるんですか?

山口 照雄

そこは人それぞれじゃないかな。私がミックスする時は、ヴォーカルのトラック背景色は必ず赤にしています。それ以外は、必要に応じて、という感じかな。

下川 晴彦

楽器の数の多い曲になると、弦は十数本とかになるじゃないですか。それだけ多いと、いま何を録っているのか分かるように、アシスタントが色を変えて見やすくしてくれます。

千阪 邦彦

アナログのオープンリール時代、“トラック・シート”に記入するネームは、皆さんが書いていたんですか。

下川 晴彦

いまと変わらず、基本的にはアシスタントが書いていました。

北川 照明

私のいた会社は、自分一人で歌録りや、ミックスダウンすることもあったので、楽器の名前などはアシスタントが書いてくれましたが、ミックスダウンの時に必要な情報は自分で書いていました。

川澄 伸一

トラック・シートは、他のスタジオに持っていくので「誰が見てもわかるような書き方をしなさい」とよく言われました。

猪俣 彰三

それは教えがいいね。