SPECIAL

OUTLINE 概要

ファイルネーム、TV用ミックスの表記のことから、フォーマットの話へ。
2019年7月23日収録。

SECTION.1 サンプリング周波数&ビットレート

川澄 伸一

みなさんに聞きたいのですが、ファイナル・ミックスとインスト・ミックスとTVミックスと3つ作ることがありますよね。

下川 晴彦

TVミックスって?

川澄 伸一

ヴォーカルだけ抜いたミックスです。

吉田 保

いわゆるマイナスワンだね。

下川 晴彦

それをTVミックスって言っているんだ。

川澄 伸一

インスト・ミックスは、コーラスも含めて声が全部ない。

山口 照雄

TV局から「この曲を2分45秒にしてほしい」といわれたものをTVミックスと呼んでいたよね。

北川 照明

そう。これは勘違いする人がいるかもしれない。

吉田 保

アメリカでは、ヴォーカルを抜いたものをTVミックスと言うよ。

川澄 伸一

アメリカはそうですよね。もちろん、我々もそういうミックスをよく作りますが、最近、TVミックスと書くのは、ちょっと嫌だなと思っているんです。でも、それに替わる言葉が見つからないんです。それで、最近使っているのは、オフ・ヴォーカル・ミックス。みなさんはどう書きますか?

北川 照明

うーん、オフ・ヴォーカルって美しくないよね。

吉田 保

そうやってヴォーカルを抜いたのって、何に使われるの?

川澄 伸一

よくCDにカラオケが入っていますよね。そのカラオケを表記するときに「オフ・ヴォーカル」と書く例が増えていて、クライアントも使うようになってきたんでしょう。

吉田 保

それは日本だけ?

川澄 伸一

そうだと思います。

千阪 邦彦

インスト・ミックスやTVミックスもマスタリングに送るんですか?

川澄 伸一

送らないかな。ただレコード会社がテレビ放送などにもマスタリングしたものを使いたい、というのであれば一緒にマスタリングしてもらいます。

北川 照明

僕は2mixだけをマスタリングするんじゃなくて、放送で掛かるのもメディアと同じ音質にしてほしいのですが、トラック・ダウンした翌日に放送で使いたいという場合もある。その場合は、放送日などが事前にわかっていれば、なるべく早い段階でトラック・ダウンして、マスタリング・エンジニアに渡します。だから、2mixに加えて、インストやTVミックスもマスタリングに渡します。

山口 照雄

制作が終わったばかりであれば対応できるんだけど、発売時期と放送する時期が大きく離れていると、改めてマスタリングに依頼はできないよね。

北川 照明

エンジニアの様に音に関わる以外の人の中には、そういうところに無頓着な人もいるね。我々としては、どこであっても同じクオリティのサウンドで出て欲しいと思うのですが。

山口 照雄

質問なんだけど、マスタリングに渡すフォーマットは48kHz/24bitですか?

千阪 邦彦

まさに僕も聞きたかった事です。

川澄 伸一

トラック・ダウンしたファイナル・ミックスのフォーマットの事ですね。

山口 照雄

そうです。最近、「48kHz/24bitでくれないか」と言われたそうなんです。それでディレクターが困っちゃって「そういう指示があったんですけれど、どうにかなりませんか?」と、こっちに来くるわけですよ。その辺はどうしていますか?

川澄 伸一

それは、あまり考えないですね。我々の作った音源が、どう使われるかはわからないので、基本的にはレコード会社におまかせします。

北川 照明

たぶんクライアントであるレコード会社さんが、うまく対応してくれているのか、私のところに来ることはないですね。

千阪 邦彦

みなさんがレコーディングする時にサンプリング周波数はどれくらいですか?

北川 照明

納品のビットレートとサンプリング周波数はレコード会社によって違いますね。

山口 照雄

96kHz/24bitは、同録をやっているところでは、まだ怖い部分があると聞いたので、トラブルが起きるようでは意味がないと思って48kHz/24bitだね。でも、今後は96kHz/24bitになるかもわからない。

千阪 邦彦

48kHz/24bit?

川澄 伸一

僕は基本96kHz/32bit floatです。

吉田 保

演歌も96kHz/24bitで録るの?

山口 照雄

録らない録らない。基本は48kHz/24bit。

川澄 伸一

あとは販売する時のメディアで納品のフォーマットが変わる。

山口 照雄

ハイレゾ販売をするなら、そこは96kHz/24bitで録ります。

吉田 保

僕は96kHz/24bitで録っても、止まったことはないな。

山口 照雄

たしかに96kHz/24bitでも、止まらないんでしょうけど……

川澄 伸一

万が一を考えると、怖いというところがある。でも、HDXカードが2枚入っているとずいぶん安心します。

吉田 保

確かに1枚だとね。

北川 照明

サウンドシティで仕事をした時、まさにこの話題になったんです。僕は48kHz/24bitで録っているんですが、一緒にやっている作家さんやアシスタントも交えて、ハイレゾの話になったんです。その時アシスタントから「最近は96kHz/24bitか96kHz/32bit floatが多くなった」と聞きました。特にユニバーサル・ミュージックやソニーといったクライアントが来るとディレクターが「会社から96kHz/24bitで録りなさない、と言われています」と言うのだそうです。「でも、止まらない?」って聞いたら「最近は止まらないですよ」と言っていました。僕なんかは、昔のイメージがあるから、ちょっと怖いっていう気持ちはあるけどね。

川澄 伸一

どのMac Proを使っているかも、大きいでしょうね。いまのMac Proなら大丈夫です。絶対に、とは言えません。