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OUTLINE 概要

前回に続き、オタリテック様の取扱い製品、PMCスピーカーについて。
2019年12月16日収録

SECTION.1 IBシリーズやQB1シリーズに採用された 平面ウーファーについて

北川 照明

写真を見ると、IB1SとIB2Sではユニット配置と、ポートの位置が違います。なにか思想的な違いがあるんですか?

兼本 吉彬

どちらも“ATL(Advanced Transmission Line、アドバンスト・トランスミッション・ライン”を採用しており、音道の長さを変えることで、低域をコントロールしているからです。この2モデルに限らず、PMCの多くのスピーカーは、どれも前面にATLのポートを持ってきているのが特徴でして、後ろへ回り込む低域がとても少ないスピーカーになっています。そのため、壁との距離に悩むということは、かなり少ないと思います。

北川 照明

IBシリーズは、EQなどチューニングできる機能は付いているの?

兼本 吉彬

パッシブ型とIB1S-AIIIは調整できませんが、IB2S-AIIは、EQやユニットごとの出力レベル、クロスオーバー周波数などを調整できます。EQは、高域と低域のシェルビング、ミッドに3つと計5ポイント(±8dB)です。EQと各ユニットの出力レベルを組み合わせることで、効果的な調整ができるようになっています。

吉田 保

ウーファーに使っている平面スピーカーは、いつ頃から使われているんですか?

兼本 吉彬

皆さんがイメージするPMCのスピーカーといえば、タイヤ・ホイールの様な38cmウーファーを持つBB5だと思います。そのBB5に引けを取らない音を出すために生まれたユニットが、この平面スピーカーです。ユニットのコーンは、ハニカム構造となっており非常に丈夫にできています。そのため、大きな入力信号が来ても負けずに働き続けるので、25cmのウーファーでも充分なアウトプットレベルを稼げます。このユニットによって、エンクロージュアが小さくても、上位モデルに匹敵する低域とパワーを持ったモニターを開発できました。ちなみに、このIBシリーズの開発背景ですが、日本からの強い要望で開発に踏み切ったと聞いています。

森元 浩二

ラージ・モニターQB1-Aに使われている平面ユニットは、どのくらいの大きさなんですか?

兼本 吉彬

IBシリーズとまったく同じ25cm平面ユニットを4基使っています。この平面ユニットは、まずIBシリーズに搭載され、そこで培った技術を加えラージ・モニターのQB1シリーズに採用されます。

岡部 潔

QB1-Aは、Inter BEEで聴いたけれどすごく良かった。それと近い音がするIBシリーズだったら、いま使っているモニターに差し替えてもいいかな。

森元 浩二

IB2S-AIIもいいですよね。

吉田 保

PMCは明るい音だから良いよ。イギリスのメーカーと聴いたけれど、イギリスっぽくないよね。アメリカ製みたいな音がするよね。

森元 浩二

IBシリーズとQB1シリーズは、ツイーターやスコーカーも一緒ですか?

兼本 吉彬

IB2SとIB1Sとで使用されているユニットが異なりまして、IB2Sはすべて自社製ユニットです。この自社工場で製造されている75mmスコーカーは、ボイスコイルの巻数や手巻きしているほか、すべてハンドメイドになっています。このスコーカーも、PMC創業当初からラージ・モニターすべてに使用されていまして、パワーもかなり違います。本当にPMCが聞かせたい音は、このスコーカーが肝になっています。ツイーターに関しても、PMCが独自にデザインしています。

吉田 保

終わりに今後の展開についてお話しいただけますか?

兼本 吉彬

今後の展望ですが、PMCはこれまで社長のピーター・トーマス1人でスピーカー設計をしていたのですが、息子のオリバー・トーマス氏も父と共にスピーカー設計に携わるという体制になりました。オリバーは、PMCに入社するまでレーシングカーの空力を研究していた方なので、今後は基幹技術のATLに手が加えられ、さらにクオリティが上がると思っています。

岡部 潔

急に欲しくなっちゃったな。

一同

(笑)

兼本 吉彬

それともう一点。PMCにはカスタム・インスタレーションというラインナップがありまして、「Wafer(ウェイファー)」という家庭や会議室などに使うことを想定したシーリング・スピーカーがあるんですね。これをキャピトルスタジオでは、3D音響のハイト用として使っています。パッシブ型なのでアンプを積んでいない分、重量も軽い上に、厚さが10cmとコンパクトになっています。しかし、ATLによってコンパクトでも低域が伸びており、そして、PMCのサウンド・カラーを損なっていません。3D音響をお考えの方であれば、ぜひ聞いていただきたいモデルです。

岡部 潔

まずは、試聴室にお邪魔して、IB1S-AIIIとIB2S-AIIの両方を聴いてみたいね。

森元 浩二

きっと低域のレンジが全然違いますよ。

兼本 吉彬

そこは大きく違います。

吉田 保

ありがとうございました。

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2回に渡り、オタリテック株式会社 兼本氏にPMCスピーカーをご紹介いただきました。今後の展開も楽しみです。

次回は、株式会社エムアイセブンジャパン 登井氏に新製品を中心にご紹介いただきます。