SPECIAL

TITLE タイトル

「JAREC賛助会員社製品レビュー」

UPDATE
2022.11.09
TAG

OUTLINE 概要

JAREC賛助会員社が取り扱う製品をJAREC会員エンジニアがレビューするという企画の第2弾です。今回は、オタリテック株式会社様、株式会社メディア・インテグレーション様のマイクロホンです。
イベントスペース LUSH HUBで男性ボーカルを録音し、その後座談会形式でレビューを行いました。

2022年9月9日(金)、渋谷LUSH HUB
参加者:北川照明、岡部潔、川澄伸一、千阪邦彦、中澤智、三國浩平
Vocal:桂智史

SECTION.1 製品紹介 -オタリテック-

Roswell Mini K87

アメリカのメーカーROSWELL Pro Audioの製品で、Neumann U87をベースに独自に開発された製品です。
発売は今から2年前ですが、スタジオ用途はもちろん、昨今のホームレコーディング需要で
アーティストの方にも広くお使いいただいております。
https://otaritec.co.jp/product/mini-k87/


Ehrlund EHR-M

スウェーデンのメーカーEhrlundの製品です。
三角形のダイアフラムが特徴の極めてクリーン志向の色付けの無いマイクです。
周波数特性は7~87kHzで一部のハイレゾ録音にも対応可能な現代的なマイクです。
クリアな音のためピアノ、アコースティックギター、ストリングスなどには最適です。
https://otaritec.co.jp/product/ehr-m-2/

SECTION.2 製品紹介 -メディア・インテグレーション-

LEWITT LCT 540S

セルフノイズのレベルが人間の可聴限界レベルを下回っていることが特徴のマイクです。
通常のマイクでは考えられないほど素直な音色で収録されており、LEWITT社の人気マイクです。
https://www.minet.jp/brand/lewitt/lct-540-subzero/



Earthworks SV33

測定マイクメーカーの大御所Earthworksが作成したボーカル向けフラッグシップマイクです。
指向性の構造に関する特許を持っており、他のマイクでは不可能な指向性を持っています。
指向性内では近接効果も非常に少なくどの位置でも素直な音を収録する反面、指向性外の音の減衰幅が非常に大きいことが特徴です。
https://www.minet.jp/brand/earthworks/sv33/

Lauten Audio LT-386 Eden

見た目からも分かる通り、ノイマンを意識した真空管マイクです。
しかし、カプセルから回路に至るまで自社で設計、製造を行っており他インスパイア系とは一線を超えたクオリティの音色で収録が可能です。
https://www.minet.jp/brand/lautenaudio/eden/

SECTION.3 review1 "Roswell Mini K87"

千阪 邦彦

今回のマイク試聴では、5本のマイクを聴いていただきました。それぞれの感想をお聞きしたいと思います。前回同様リファレンスマイクとしてNeumannのTLM67も聴きました。1つめはRoswellのMini K87。印象はいかがでしたか?

三國 浩平

大枠のキャラクターは、Neumann系なんだなと感じました。

千阪 邦彦

今回1番安価なマイクですが、普通にNeumann的な音をしているなという感じが伝わります。

中澤 智

TLM67と比べると、中域が弱いというか、音圧感が弱い感じはありましたね。ちょっとあっさりはしていますけれど、この金額でよくできています。

岡部 潔

少し指向性が広いのかなと思いましたけれど、ヴィンテージのU87の雰囲気にはなっているかなと思いました。

北川 照明

僕も似ていると思いました。リファレンスのTLM67と比べて、Mini K87はNeumann系の音をしているなと。それでこの金額はすごく良いよね。

千阪 邦彦

びっくりですね。極端な話、目を瞑って聴いたら、当てられないかもしれない(笑)。なかなかすごいと思います。

岡部 潔

ただ単一指向しかないので、そこは割り切ってね。

北川 照明

気になるのは、周波数特性を見ると16kHzまでしかない。高域がそんなに伸びてないんですよ。

岡部 潔

でも、自宅で使うにはちょうど良いですよ。ホームユースを考えると、余計な音を拾わなくてすむのは利点ですね。

北川 照明

雑音とかを気にしないで扱いやすいかもしれない。ただ16kHzしか伸びていないので、オールマイティとしていろんな楽器を録るには、どうかな? という感じがします。今日はヴォーカルだから全然問題なかったけどね。

千阪 邦彦

例えばドラムにたくさん立てるとかってどうですか。場所を取らなくて便利かなと思ったんです。

岡部 潔

そこはトランジェントがどのくらいあるのかですね。アタック感は、今回のテストではわからないので。

北川 照明

ドラムとかそういうものになると、耐圧の事やかぶりがどのくらいあるのか。ちょっと気になるよね。

三國 浩平

指向性が広いので、この場所の響きをテストした5本の中で1番響きが入っていました。家で使うには、そこに気をつける必要があると思いました。

千阪 邦彦

それは性能が良いという事なんですか?

岡部 潔

昔のU87の傾向に近いからだと思いますけどね。

北川 照明

周波数特性を見ると中高域に1山あって、10kHzあたりにもう1山ある。Neumann系に共通する特性だね。

千阪 邦彦

いまヴィンテージU87も高くなりましたから。それを考えるとかなり良いマイクという気がします。 U87というと、ピアノもありかなと思うんです。

北川 照明

ピアノに立てたら、高域の伸びの足りなさが出てくるかもしれないよ。

千阪 邦彦

マイクプリを選ぶとしたら、どんなものに合わせるのがベストですか。

中澤 智

僕だったらneve系を使うかな。後はAMEKの9098とか。

岡部 潔

APIを使ってガッツを出すというもありですね。

中澤 智

それもありですね。

三國 浩平

ものすごいクセが強いという感じはないので、何を使っても大ハズレになることはないと思います。

北川 照明

僕が思うには、柔らかめの音がするマイクプリよりは、少し硬めなマイクプリの方が合うかなという感じはした。

岡部 潔

ヴォーカルなら、自分的にはAPIの512かな。後はコンプとの相性があるからね。そうしたら少し前に音が出てくるだろうから。

千阪 邦彦

価格も含めて、どんな方がターゲットになると思いますか。

岡部 潔

マイクの本数が必要な人。この値段だったらいくらでも買えるので(笑)。

千阪 邦彦

ちなみに、このマイクの修理はどうなるんですか?

オタリテック

何かあったら弊社でお預かりする事になりますが、ほとんどの修理は国内で行ないます。

千阪 邦彦

アメリカで作っているけれど、修理は日本でやってくれると。

オタリテック

パーツを仕入れて、弊社の技術部が行います。

中澤 智

それは重要ですよね。海外の製品だと修理期間が長くて、なかなか帰ってこないのもあるじゃないですか(笑)。

岡部 潔

オタリテックさんが、メインテナンスしてくれるというだけで安心感があるね。

千阪 邦彦

この前、別の機材で修理依頼した時、発送だけで30万って言われました。しかも、修理するかどうかに関わらず、本社へ送るようにと言われましたからね。

中澤 智

そういう意味でも、いろんな人が安心して使えそうです。

千阪 邦彦

使いやすいマイクですね。

オタリテック

使用している一例として、ギタリストがプライベート・スタジオでアンビ用としてずっと立てっぱなしにしています。NeumannのU87では、そういう使い方はしないと思います。あとはマッチドペアもありますので、そういう意味でも扱いやすいマイクになっています。

北川 照明

Mini K87は、ほとんどの楽器が録れるんじゃない? マイクは、できればペアで使いたいんですよ。それはスペア的な意味もあるし、2本で録りたいという場合もある。そう考えると買いやすい価格だからまとめて使えるというのは、すごく便利だよね。

岡部 潔

ミュージシャンに、マイクが欲しいと聞かれたら、Mini K87を2本買っておけと言える値段ではありますね。

千阪 邦彦

10年ぐらい前から、こういう安価な名機クローン系のマイクがすごくたくさんありますよね。僕も買ったことがあったんですが、それらと比べて驚くくらいに良いです。Neumannのテイストを再現していると思いました。

三國 浩平

小さいのが良いですよね。本家のU87は重いので、しっかりしたマイクスタンドじゃないと垂れてきますからね。

千阪 邦彦

このマイクはショックマウントも付属しているんですか?

オタリテック

ハードケースとショックマウントも付いています。

千阪 邦彦

それで6万円を切るんですか。そして、made in USAだと。すごいな。

北川 照明

ちょっといじわるな言い方だけど、マッチドペアがあるという事は、特性に個体差があるということなのかな。

オタリテック

若干の個体差はあります。そのため、シングルで2本買うよりも、マッチドペアは選別コストが乗るのでちょっと高くなります。

千阪 邦彦

Roswellには、U47タイプもあるという事なので、それも聞いてみたいですね。

SECTION.4 review2 "Ehrlund EHR-M"

岡部 潔

僕はすごく好きな音。立ち上がりは早いし。

中澤 智

レスポンスがすごい。

千阪 邦彦

ハイの抜け感というか綺麗になっていますよね。

岡部 潔

レンジ感がちゃんと上下あって、歪感もないのですごく良いんです。

川澄 伸一

それに滑らか。

北川 照明

解像感はすごかった。

岡部 潔

スタジオに買ってほしい(笑)。

中澤 智

確かにスタジオですよね。スタジオで使いたいマイク。

千阪 邦彦

22万7千円でここまでの出るのか、とちょっとびっくりしました。このマイクのキャラクターを一言で言うとクリーン。

中澤 智

うん。クリーンですね。

北川 照明

暗騒音をかなり拾っているんですよ。テストでは感度をシビアに合わせているわけじゃないけれど、EHR-Mに変えたとき、この場の暗騒音をよく拾っていた事がよくわかる。、個人で使われる場合は、部屋の環境をちょっと気にした方がいいかもしれない。使う上で神経を遣うかもしれないね。

千阪 邦彦

スタジオに買って欲しいなというマイクではあるんですけれど、個人で使うとき、ちょっと使い方に注意が必要なところがありますよね。

北川 照明

Mini K87と比べると、気を遣うマイクと言えるかもね。

川澄 伸一

部屋だといろんな音を拾っちゃいそうです。

北川 照明

録音は部屋の片付けから始まりそう(笑)。

千阪 邦彦

「エアコンがこんなに低音が出ていたんだ」みたいな。そういう所がすごくわかりやすいのかもしれない。それだけ優秀という事でしょうね。

北川 照明

そうだね。それだけ能力が高いという事だよね。

千阪 邦彦

EHR-Mは87kHzまで録れるのでハイレゾに対応している現代的なマイクです。今日はヴォーカルでしたが、他にどういうのが合っているかイメージはありますか。

川澄 伸一

ストリングスを聴いてみたいですね。面白そうです。

中澤 智

このマイクは単一だけですか?

オタリテック

このマイクは単一のみですが、ラインナップにあるEHR-Tは、デュアル・ダイアフラムで、それぞれのダイアフラムに出力が付いておりますので、ご自身でフェーダーや出力を反転することで、指向性を調整するようになっています。

千阪 邦彦

Ehrlundは、三角形のダイアフラムが特徴ですね。

オタリテック

Ehrlundマイクの特徴は、ダイアフラムとボディが独自の構造で固定されているので、ショックマウントは必要ありません。録音対象ですがアコースティック全般に良いと思います。また、とても軽いのでグランドピアノの録りでも、かなり楽に立てられると思います。

岡部 潔

ただ、この軽さが、高いマイクと感じさせないというか(笑)。

北川 照明

確かに重さも大事だけど……そうだね、そう言われてみると、この金額の重さじゃないかもしれない(笑)。

オタリテック

そこは取り回しの良さを強調してください(笑)。

川澄 伸一

軽いから、この仕組みでノイズを抑えられているんだろうね。

三國 浩平

重さが340g。持たせてもらいましたが、本当に軽いですね。

千阪 邦彦

マイクプリとの相性はいかがですか。

川澄 伸一

綺麗な音のするアンプの方がいいな。

三國 浩平

Millenniaとか使ってみたいなと思いました。

千阪 邦彦

GML、その他、綺麗な感じのするマイクプリですね。

中澤 智

Millenniaは、いいかも知れない。

千阪 邦彦

Mini K87と違って、即答でしたね(笑)。マイクプリやエフェクターを選びやすいマイクでもあるということかなと思います。

川澄 伸一

使う目的がはっきりしているマイクかもね。

千阪 邦彦

目的がはっきりしているから、そこに合わせていけば間違いない音が録れるということですね。先ほど、レコーディング・スタジオが良いとおっしゃっていましたが、他にどんな人に合うでしょうか。

川澄 伸一

ちゃんとしたスタジオを持っているミュージシャン(笑)。

千阪 邦彦

宅録というイメージだと、感度が良すぎるのでちょっと辛いかなという感じですよね。

川澄 伸一

ホール録音とか。軽いから吊るしも良さそう。

三國 浩平

確かに生楽器がとても綺麗に録れそうなマイクなので、ホール録音は面白そうです。

SECTION.5 review3 "LEWITT LCT540S"

中澤 智

このマイクだけ、重心が高く聴こえたんですよね。まるで上から音が出ているような感じ。これをエンジニアは、他の人も理解できるような言葉にしなければならないのですが、なんと言ったらいいのか。だからと言って、低域が少ないわけでもない。……意外とナチュラルなのかな。もっとも豊かな低域ではないですよ。中低域のパンチも、そんなにある感じはしなかったですけれど。キャラクターの強いマイクでした。

岡部 潔

明るいマイクだったですね。

中澤 智

そうなんですよ。

川澄 伸一

ちょっと子音がきつく聴こえた。

中澤 智

高音が強いのか、低音の支えが少ないのか。

川澄 伸一

ある意味リアルな感じがちょっとした。低域が無いわけじゃないんですが、同じくちょっと上の方に来ていたね。

中澤 智

リアルという言い方が合っているかもしれないですね。

川澄 伸一

実際に声を出している感じがありますね。

千阪 邦彦

今日録った場所の感じは、そのまま拾っている気もします。

メディア・インテグレーション

このマイクはAKG C414と比較される方が非常に多いんです。AKGの高音域にあるジャリッとしたところをうまく抑えていて、今の音楽性に合ったAKG系のサウンドを求めたいときに、このマイクがぴったりと言われる方が多いんです。

岡部 潔

それで7万2千円だったらいいですよ。PADも-6dB/-12dBとあるし。

川澄 伸一

C414よりは使いやすいかな。

三國 浩平

C414はギラッとした印象がありますが、少し落ち着いた感じがします。

北川 照明

僕が感じたのは、録音のレベルが大きかったせいもあるんだけれど、皆さんのコメントとは逆のイメージで詰まって聴こえたんだよね。でも、上が伸びてないとか、そういう事でもない。録りの後に聴感でレベルを揃えて一度聴いているので、その時はあまり感じなかったんだけれど、録っているときにモニターした時は、高域が潰れているように感じたんです。

岡部 潔

たぶんNeumann系よりは上の暴れが少ないので、そう聴こえてしまうかもしれないね。僕はこのマイクだけスーッと伸びた雰囲気に聴こえたんですよ。これだけはふわっとした感じもあって、面白いなと思ったんです

三國 浩平

僕も北川さんと同じ印象を持っていて、周波数特性がどうこうというよりも、少しレンジ感がきゅっとしている感じでした。

北川 照明

そうそうナローな感じがしたんだ。でも、周波数特性を見ると違うんだけどね。なんだろうね……。

岡部 潔

トランジェントの影響もありますから。

千阪 邦彦

それはあります。

岡部 潔

あとはEhrlundの後に聴いたというのもあるかもね(笑)。

北川 照明

それはあるかも。

岡部 潔

Ehrlundは、すごいレンジが広くてトランジェントも録れているので。

北川 照明

その直後だから、そう感じたのかもしれない。

メディア・インテグレーション

LEWITTのマイクは、これに限らずエフェクト処理が少なく済むように、完成したサウンドで録れることをコンセプトにしているんです。今回はヴォーカルでしたが、お貸ししますので、ぜひドラムのトップとギターアンプに試していただければと思います。もうこれで良いというサウンドになっていると思いますので。

北川 照明

今の説明を聞くと、なんとなくわかる気がする。

三國 浩平

腑に落ちた感じがありますね。

千阪 邦彦

このLCT540S 、マイクプリは何が良いでしょうか。

岡部 潔

僕はミキサー卓のHAで良いという気がしました。SSLでもNeveでもAPIでも良いので、その楽曲に合ったもので良いんじゃないかと。

千阪 邦彦

このマイクはどんなお客さんに合うと思いますか。

川澄 伸一

レコーディング・エンジニアですね(笑)。スタジオが持つというよりも、この価格だと個人で買うマイクだと思う。

千阪 邦彦

僕はCMの仕事が多いのでMAで使いやすいと思いました。そこから派生するとYouTubeで使うとか。実際にYouTubeを見ていると、LEWITTのマイクをよく見るんですよ。そういうことだったんだなと、音を聴いてはっきりわかりました。

メディア・インテグレーション

LEWITTのマイクは、ライブサウンドでも多くご愛用いただいております。

千阪 邦彦

宅録の方にも良いかなと。

中澤 智

いいですよね。

千阪 邦彦

オールマイティに使えるし、手持ちのマイクプリを使って。

三國 浩平

僕はホールでクラシック・パーカッションに立ててみたいですね。

中澤 智

いいんじゃないでしょうか。

川澄 伸一

J-POPのピアノとかですかね。

SECTION.6 review4 "Earthworks SV33"

中澤 智

歌は非常にナチュラルで良い感じでした。

千阪 邦彦

個人的に、このマイクは聴いてみたかったんです。

北川 照明

私もそうです。全ての楽器向けに考えられたマイクに比べると細身なんですよ。だけどヴォーカルを録るとき、場合によっては邪魔な帯域があるんです。そこが最初からすっきりと無くなっている。ヴォーカル専用的なマイクとして、こういうチューニングなんだなと。確かにこれだったら使いやすい。ただし、ヴォーカルに特化したマイクという事ですが、結構いい値段(本体価格33万円)。

千阪 邦彦

僕もそこは気になりました。

北川 照明

音の印象を細身と話しましたが、ヴォーカル以外の楽器のときは、ちょっと物足りなくならないかなという感じがするんだよね。

千阪 邦彦

岡部さんはレコーディングでEarthworksをよく使われますけれど、他に比べてどうですか。

岡部 潔

僕がよく使うのはQTC40など無指向だし、上下周波数も出ていますし、Earthworksのラインナップとはいえ、まったく別物のマイクです。Earthworksの無指向性マイクはひたすら周りの音を拾う、5Hzぐらいから50kHzまで拾います。SV33のターゲットは、プロのヴォーカリストとのことですが、家でずっと立てておくというのが一番理想でしょうね。

北川 照明

形状もオールマイティには使いにくい感じがするね。

岡部 潔

ルックスはSHUREのSM7など好きな人には、ちょうどいいでしょうね。

北川 照明

このマイクは指向角度による音色変化が起きにくいという事だけど、幅はどのくらいだろう? 

千阪 邦彦

指向角度から外れると急にバンと落ちますよね。

岡部 潔

50cm~80cmくらいですかね? それに近接効果はそんなになかったですね。

千阪 邦彦

音色はとても素直です。

中澤 智

本当に素直です。

千阪 邦彦

後から加工しやすいかな、という感じもありました。

北川 照明

フカレはどうかな。

川澄 伸一

少なかったですね。ただ、ちょい軽めの音なんだよね。

千阪 邦彦

ヴォーカル向けとの事ですが、例えば男性と女性ならどちらに合いそうですか?

川澄 伸一

どっちでも行けるんじゃないですかね。

中澤 智

ライヴシーンでは使わないんですか?

メディア・インテグレーション

このマイクはレコーディング向けで、ライヴ向けにはハンドヘルド型のSR314という11万円のマイクを用意しております。

千阪 邦彦

素直な音とのことですが、どんなマイクプリと相性が良さそうですか?

中澤 智

好きなマイクプリのキャラクターは出やすいと思います。ただ、あまりにも素直だから、どういう曲に入れ込むかという時に、マイクプリの選択がけっこう影響すると思います。ちょっとソリッド系ならそっち系を使って、ちょっとガッツが欲しかったらガッツ系のマイクプリを選ぶとか。そういうマイクプリの持つキャラクターを出しやすいんじゃないかなと。

千阪 邦彦

確かにこれだけ素直なので、マイクプリの特性をそのまま出そうな感じがします。お好みのマイクプリを使うと、その音になるよという。 お勧めできそうな人はどんな感じですか?

岡部 潔

例えばプロの女性ヴォーカリストにこのマイクを預けて、「これで録ってきて下さい」とお願いできそうな感じ、丈夫そうですし。

千阪 邦彦

ヴォーカル用にチューニングしているから、余計なことをやらなくていいですからね。それこそ今流行りのAudiomoversを使ってチェックしながら、ヴォーカル録音をしていくにはいいと。

北川 照明

ちょっとぐらい指向角度から外れても大丈夫だしね。

岡部 潔

たぶん歌いやすいでしょう。

川澄 伸一

これでナレーション録りという例はあまりないんですか? ラジオとか。

メディア・インテグレーション

実際にナレーション用でご利用いただいているスタジオもございます。

中澤 智

それはいいと思いますね。ラジオ収録とか良いと思います。

メディア・インテグレーション

最近、コスプレイヤーのえなこさんが、YouTubeライヴでSV33を使っているんです。それでこのマイクも人気が出ています。SHUREのSM7みたいに形が面白いというところと、指向角度内であれば音質が保てるというところ。そして、配信者の部屋はあまり防音されていないので、指向角度以外の音を拾わないという事がすごい大事なんです。外で走るクルマの音であったり、隣の部屋の音を拾わないという所が評価されて選ばれたそうです。

千阪 邦彦

えなこさんが使っているとなると、フォロワーで買った方もいるんじゃないですか。

メディア・インテグレーション

おかげさまでかなり売れました(笑)。

SECTION.7 review5 "Lauten Audio LT-386 Eden"

千阪 邦彦

5本目のLT-386 Edenは真空管マイクです。形からして想像できるような音だったかなと思うんですが。

川澄 伸一

音の傾向を3つ「Forward」「Neutral」「Gentle」に切り替えられるというところが面白いよね。

中澤 智

3つを聴きましたが、やっぱりNは文字通りNeutralでしたね。

千阪 邦彦

Neutralと言いながらも、真空管の味付け感じますよね。

北川 照明

テストモデルの中で、このマイクだけ真空管だけど、いかにも真空管マイクらしい音がしていたね。

中澤 智

もっと来るかなと思ったけれど、意外とあっさりだったイメージはあります。

千阪 邦彦

1番サチュレーションが強いForwardはパッと聴いたとき、ちょっと強めかなという感じがしました。個性的な味付けだなという気がしたんです。

岡部 潔

僕は歪んでいるという感じがしました。

川澄 伸一

僕はメモに嫌だって書いてある(笑)

岡部 潔

真空管にしては、ゲインが小さいと思ったのは気のせい?

中澤 智

そうですよね。

岡部 潔

気構えて聴くと「あれ?ゲインが小さい」と思ったので。真空管だからゲインが1段大きくくるつもりでいるじゃないですか。それが意外。最近のマイクなんだなと思いました。

千阪 邦彦

最近のマイクだから、普通のマイクと揃えてくれているかもしれないですね。真空管マイクの事もよくわからない世代の人たちが使う事が多いだろうし、そこは丁寧にやってくれているという気がしました。

北川 照明

あとはエレメントが大きいせいか、吹かれに弱い感じがしたね。

岡部 潔

このマイクはウインドスクリーンがないと無理でしょう。

中澤 智

無理ですね。今日のマイクの中では、ウインドスクリーンがないと無理なマイクだなと思いました。ちゃんと拾っているのかなと思ったけれど、吹きにはちょっと弱かったと思います。

北川 照明

Webの説明文を読んだとき、僕はGentleモードに期待していたんだけれど、全体に丸くてちょっと物足りないかな。Forwardは、メモを見ると何かコンプが入っているようなイメージと書いてあるんだよね。ちょっと声を張ると、ちょっと詰まる感じがしました。

川澄 伸一

Neutralが1番よかった。

中澤 智

1番よかったですね。

岡部 潔&北川 照明

そうですね。

千阪 邦彦

これインスパイア系とは一線を画したと、ネットの製品紹介に書いています。Neumannを意識していないという意味だと受け止めたんですが、今回はリファレンスとしてNeumannのマイクを聴いていますが、いかがでした?

北川 照明

Neumannのマイクをコピーしている感じはしなかったけれど、他のマイクと比べたら、真空管マイクっぽい音はしていた。それが今っぽいのかどうかはわからないけれどね。

川澄 伸一

TLM67よりも、ちょっとだけ上が聴こえる感じがしました。

岡部 潔

Naturalだと、真空管の良い感じが出ているんですよ。でも、他の2つのモードに関しては、いらないんじゃないかという感じがする。

中澤 智

GentleとForwardは使い道が良くわからない。

岡部 潔

Neutral以外は無くて良いから、値段を下げてくれた方がうれしいですね。

千阪 邦彦

いまも真空管マイクはたくさんありますが、それらと比べてどうですか。

北川 照明

……50万円という金額を考えると難しいところだね。

岡部 潔

でも、50万円台で買える真空管マイクは、これ以外ほとんど値段が上がってしまったからね。

千阪 邦彦

僕はLT386 Edenの音を聴いて、50万円でこの音なら良いと思いました。

中澤 智

このマイクはどういう方が買われているんですか?

メディア・インテグレーション

1番多いのはレコーディング・スタジオ。個人の方も持ち回ると聞いていて、店頭で試して「スタジオでも試したい」とデモ機を借り「これください」みたいなパターンが多いですね。

北川 照明

ヴィンテージの真空管マイクだとメインテナンスの心配があるからね。そうしたことを気にしないで扱える真空管マイクが1本欲しいなと思ったとき、安心して買えるんじゃないかな。ただ、真空管らしさが強いかというとそこまではいかないかな。

岡部 潔

メインテナンスは、どこに出すんですか?

メディア・インテグレーション

真空管交換などの簡単なものは、弊社内で行います。それ以上の不具合が起きてしまったら、メーカーに送って修理してもらいます。

千阪 邦彦

このマイクに合ったマイクプリはどうですか?

北川 照明

neve系でやると本来の真空管を録るにはいいのかなと。

千阪 邦彦

明らかに合いそうですね。

川澄 伸一

neve系なら1073と組み合わせたいな。

岡部 潔

試すならギターを録ってみたい。APIのマイクプリで、コンプかけてというのが面白いなと思いますけど。

中澤 智

ギターは良いかもしれない。

千阪 邦彦

どんなマイクプリを選ぶかで、どういう音楽に合うのかって想像できるような感じもします。対象とするお客さんはどうですか?

岡部 潔

アーティストに買わせて好きに録りなさいと言っても無理だと思うので、エンジニアが買う感じですよね。

中澤 智

スタジオ向きでもないんだよな。フリーランスのエンジニアが買う感じですね。

川澄 伸一

大手スタジオではなくて、中堅スタジオが持っていそう。

中澤 智

そうですね。たくさんのマイクを持っている、ちょっとプライベートにも寄っているスタジオにありそうです。

千阪 邦彦

うちのスタジオもあまりマイク数はありませんが、真空管マイクがないので良いかもしれない。

北川 照明

初めてのスタジオ行って、これがバンと置いてあったら「お!できるスタジオだ」って(笑)。

中澤 智

そういうスタジオってマイクがいっぱいあるじゃないですか。それが意外と面白い。大手だとちょっと買いにくいかな。他の真空管マイクがあるから使ってもらえない気がします。

岡部 潔

大手はどこも良い真空管マイクがありますからね。

千阪 邦彦

ちなみにこのマイクを宅録の人で買う人はいるんですか。

メディア・インテグレーション

これもYouTuberなんですけれど、鈴木ゆゆうたさんというピアノ弾き語り配信をしている人が、このマイクを使っています。

北川 照明

ビジュアル的に説得力があるもの。YouTuberのように映像絡みだったら選びたくなるでしょうね。

SECTION.8 テストを終えて

千阪 邦彦

5本のマイクを聴きましたが、歌をお願いした桂さんはどんな印象でしたか?

桂 智史

断然LT-386 EdenのNeutralでした。モニターしながら歌った感じでは、とても気持ち良かった。

中澤 智

骨伝導で伝わってくる感じもいいんでしょうね。

北川 照明

マイクのビジュアル抜きで?

桂 智史

歌いやすさだけです。自分の下手くそな歌がよく聴こえました。

千阪 邦彦

歌っている桂さんにすると、1段、2段にレベルアップした感じにしてくれると。

中澤 智

アーティストのパフォーマンスを引き出してくれるというのは、とても重要です。

桂 智史

でも、Neutralだけでした。

北川 照明

他にどんなマイクが気に入りましたか? 例えばEarthworksのSV33は?

桂 智史

SV33も良いと思いますが、2番目はMini K87です。

三國 浩平

本日の最安マイクですよ。

千阪 邦彦

僕も正直に言って「この値段でこの音になるの?」と思いましたからね。

北川 照明

LT386 Edenとの価格差は10倍だよ。

桂 智史

でも、断然LT-386 Edenですけれど。

千阪 邦彦

断然違うんだ。1番がLT-386 Edenで、2番はMini K87だと。

北川 照明

断然っていうのは、歌い手として何が違うの?

桂 智史

モニターしていて自分の声がよく聴こえるというのと、ピッチの上げ下げもよくわかるので歌いやすいマイクでした。

岡部 潔

倍音感が良いんだね。

桂 智史

そうです。倍音感がすごく良かったです。

中澤 智

Ehrlundはどうでした?

桂 智史

Mini K87の次でしたが、マイクが変わったっていう感じはあまりなかったです。

北川 照明

2番目がMini K87だったとすると、EHR-Mはそれに近いんだ。

中澤 智

聴いている僕たちが評価した話と全然違うんですよ。

桂 智史

そうなんですか。EHR-Mと比べるとMini K87の方が歌いやすかったです。

岡部 潔

EHR-Mはささやき系とかにいいんじゃないですか?

北川 照明

ささやき系(笑)。

中澤 智

EHR-Mは歌っている時、何か気になっている事ってありました?

桂 智史

気になったところは無いですが、Mini K87よりも少し歌いにくくなりました。

中澤 智

昔とあるヴォーカリストが、ピッチが気になってうまく歌えないというので、わざとSHURE SM58を渡したんです。そうしたら細かいところは気にならなくて悩まずに歌えるというのでSM58を採用した事があります。

千阪 邦彦

解像度が低くなった分、ピッチがあまり気にならなくなったんだ。

中澤 智

はい。楽曲自体もそれで十分に合ったので、そういう録り方をしたことがあります。

千阪 邦彦

それとは逆で、EHR-Mは解像度が高いから粗が見えちゃうと。

桂 智史

はい。そんな感じです。

中澤 智

僕がヴォーカリストとどのマイクを使うのかテストすると、ヴォーカリストと意見が割れることがあるんです。「音はこっちのマイクの方が全然良いじゃん」と思うけれど、歌いやすいマイクの方がパフォーマンスは上がりますからね。

千阪 邦彦

今回のマイクを聴いて、全体的にどうでした? 自分が使うなら、これを買おうかなとか。

岡部 潔

買うとしたらEHR-Mですけれど、高価なのでスタジオに入れてほしいマイクです。ホール録音ではLCT-540S、数が欲しい時はMini K87が良いかな。自分的には、SV33とLT-386 Edenは使わないかも。

北川 照明

自分が使うという事ではなくて、この記事を読んだ人にとって勧めるならMini K87。他のマイクもたくさんあるけれど、コストパフォーマンスがとても高い。

川澄 伸一

今回のラインナップをテスト前にあらかじめ見せてもらった中で、興味を持ったのはMini K87ですね。ここ最近アーティストのプライベート・スタジオで4管編成のブラスをレンタル会社からU87を借りて録っているんです。その時、U87が欲しいねという話になったんだけど、いまは1本買うのでも大変です。今回、Mini K87を聴いてみて、これだったら買うかなと。

千阪 邦彦

U87を4本レンタルするなら、そのお金でMini K87が買えますよね(笑)。

岡部 潔

川澄さんは、ブラスを録るときPADは入れます?

川澄 伸一

PADは入れますね。

岡部 潔

Mini K87はPADあるんでしたっけ?

オタリテック

ありません。

中澤 智

それはちょっと辛いかな。

川澄 伸一

マイクになくても、外付けPADを挟んだり、やり方はありますから、PADがなくてもなんとかなります

千阪 邦彦

そこは値段を考えると仕方ない事だと思いますね。そこはある意味潔い。

川澄 伸一

あとはEHR-M。生楽器を録るのに良いかなと思いました。ヴァイオリン系を録ってみたい気がします。弦楽器ってザラザラ感が欲しいときもあるじゃないですか。逆に滑らかな音も欲しいときがあります。私は滑らかな音の方が好きなので、そういう音が録れるかなという気はしました。

三國 浩平

今日はMini K87を聴きたくて、参加したみたいなところがあるんです。自分はU87aiを1本しか保有していないんです。ホール収録のときに、U87系のマイクの本数が欲しいと思っていて、これは戦力になるなという印象でした。意外な収穫だったのが、LCT 540S。楽器を録る上でマイク本数を揃えたいシチュエーションに面白いなと。

岡部 潔

LCT 540Sマイク自体の暗騒音も少ないので、マイクをたくさん使う録音には良いと思いますけれど。

川澄 伸一

C414を買うなら、LCT 540Sもありかな。

千阪 邦彦

僕も楽器に使ってみたいです。

三國 浩平

後は皆さんがおっしゃる通りでEHR-Mで弦を録るのは面白そうです。4本揃えてみたいです。

岡部 潔

EHR-Mなら気持ち的には4本欲しい(笑)。

中澤 智

最低4本ですね。

オタリテック

Ehrlundは、他にもドラム用のEHR-Dとか、エレキギター用のEHR-Eとか。EHR-Mと特性は一緒なんですけれど、サイズを小さくしたEHR-M1というマイクやハンドヘルドのEHR-Hとラインナップされているので、また別の機会にお試しください。

中澤 智

プライベート・スタジオで録音をしているアーティストさんに、どんなマイクが良いかよく聞かれるんです。その時に、Mini K87は勧められるなと。LCT 540Sは、このくらいの価格まで出せるという人であれば、十分なクオリティの音が録れます。例えばアーティストさんに録音を頼んで戻ってきた音でミックスするときにも、ギリ行けるかなという印象をもちました。あとは、EHR-Mはデッカツリーとかオフマイクで使っても面白いと思ったり。ただEHR-Mでオンを録るのは、ちょっと苦手かもしれないなと思っています。そして、LT-386 Edenは、ヴォーカリストが気持ちよく歌えたとなると、デモで借りて他の人の声も試してみてみたい。 僕が1番注目していたのは、SV33だったんですけど、本当にナチュラルで良いと思いました。スタジオに1本あっても面白いかなと、ちらっと思いましたね。

千阪 邦彦

本当に宅録しやすい時代になったんだなというか。安いところから高いところまでいろんなマイクがあるし、安くてもスペックのいいマイクが揃っているなと聴きながら思っていました。どれもしっかり録れているし。ひと昔みたいに、なんだこれって思うマイクは淘汰され、すごくいい時代になったなと思いました。僕はMini K87はノーマークだったんですけれど、一番驚いたマイクでした。音的にはEHR-M、そして個人的にはLCT 540Sがすごい気に入りました。買いたいなと。

中澤 智

LCT 540Sは、キャラクターが本当に面白いです。でも、このマイクの音像感はなんだろうな。なんで頭の上から聴こえたのか、不思議なマイクです。

岡部 潔

LCT 540Sは、デモで借りて試してみたいマイクですね。

千阪 邦彦

長時間、どうもありがとうございました。

SECTION.9 問い合わせ先

Roswell Mini K87 / Ehrlund EHR-M に関するお問い合わせはこちら

オタリテック株式会社 営業部
電話番号:03-6457-6021
お問い合わせフォーム:https://otaritec.co.jp/contact/

LEWITT LCT 540S / Earthworks SV33 / Lauten Audio LT-386 Eden に関するお問い合わせはこちら

株式会社メディア・インテグレーション MI事業部
電話番号:03-3477-1493
購入前相談窓口:
https://store.minet.jp/sc/form_inq.html