SPECIAL
TITLE タイトル
JAREC製品レビュー「バスコンプ」
- UPDATE
- 2023.07.03
OUTLINE 概要
JAREC賛助会員社が取り扱う製品をJAREC会員エンジニアがレビューするという企画の第3弾です。今回のテーマは「バスコンプ」。賛助会員社以外の関係する企業にもご参加いただき、幅広い製品に触れることができました。
ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
2023年5月1日(月)会場:サウンド・シティ Bst
SECTION.1 製品紹介
メディア・インテグレーション
世界で最も優れたオーディオ・コンプレッサーの一つ。
発売開始の1989年から様々なディビジョンをリリースしながらも現行で販売し続けるステレオコンプレッサーの名機です。
アンブレラカンパニー
・2チャンネルのVCAコンプレッサー
VCAはTHAT 2181を4基搭載
デュアルモノ/ステレオ/MSの3モード
・DAWからのプラグイン・コントロール
VST2 / VST3 / AU / AAX / AAX DSPによる完全なプラグイン・コントロールに対応
タッチセンシティブ・エンコーダーから、DAWにオートメーションを書くことも可能
USBまたはイーサネット接続
・緻密な設定にも柔軟に対応する多彩な機能
DRY/WETミックスノブ搭載(パラレル・コンプレッション)
サイドチェイン・フィルター搭載(外部のサイドチェインにも対応)
A / B / Cプリセットボタンにより、3つの設定の聴き比べが可能
・2種類の異なるサチュレーション
入力側に可変式THDの搭載(高域のサチュレーション)
出力にはCarnhillトランスフォーマーによる「IRONモード」を搭載。質感を可変でコントロール(中低域のサチュレーション)
ソリッド・ステート・ロジック・ジャパン
THE BUS+は最高の音質を実現するため、例えばTHATの2181 VCAといった高級な部品を使用して設計されています。4つのオペレーションモードと3種の特色を選択できるコンプレッサー回路は、様々なジャンルの音楽に完璧にマッチします。THE BUS+は洗練されたルーティング機能を持ち、ダイナミック・イコライザー(D-EQ)、トランジェント・エキスパンダーといったプロセッシングツールも搭載しています。
タックシステム
ピュアクラスAオールディスクリートによるFETソリッドステート回路とチューブ回路の両方を納めた「Twin Topology」技術を採用したコンプレッサー/リミッター。
透明感ある極上のクリアサウンドと、真空管による暖かさを演出するサウンド双方に対応できる至極の一台です。
フックアップ
完全なる Carnhill 製トランスカップル入出力仕様のユニットで、73タイプ・クラスA出力段を有する、先進のサイドチェイン・フィルターとパラレルコンプレッション機能を備えた、ダイオードブリッジベースのステレオ・バス・コンプレッサー。伝説的なビンテージダイオードブリッジの設計に基づき、超高速のアタックとリリースによって、ドラムバスのコンプレッションサウンドは一層力強くなり、モダンなサイドチェイン・フィルターを使えば、これまでにない感覚での音創りが可能。
音楽制作の最終段階においてミックスをしっかりと馴染ませ、磨き上げるためのコンプリミッター。オールチューブ、オールトランスフォーマー仕様、完全なるアメリカ生産で、ハイパスサイドチェインモディファイを標準装備。 国内外問わずマスタリングリングスタジオの定番機器として君臨し、Manley Laboratories を代表するプロフェッショナルスタジオギアとなっている。
Rupert Neve Designs のアナログコンソール5088 や Portico II Channel で採用されている高電圧駆動、ディスクリートのクラスA回路をベースにしたマスタリングプロセッサー。定評あるRupert Neve 氏のクラシックデザインをさらに進化させた新回路によって、十二分のヘッドルームと広いダイナミックレンジ、低い歪みとノイズ、優れたスルーレート(素早い立ち上がり)と分離の良いバンド帯域、そして正確さ、精密さを誇る。
ミックスウェーブ
2500+は2500をアップデートされた製品です。
ステレオミックスのパンチとトーンにバリエーションを与えることができるサウンドクオリティに優れたステレオバスコンプレッサーです。
新機種、2500+は多くのエンジニア達の意見がフィードバックされ、今回Mix / Blend機能が搭載されました。
所謂Dry/Wetミックス機能です。2500にこの機能を搭載することは多くのプロフェッショナルが望んでいた機能です。
今後はバスチャンネルを用いる必要なく、ルーティングの配線ロスを気にすることもなく、効果的なパラレル・コンプレッション処理が行えます。
*Mix/Blendは3種類のモードが選択できます*
- OFF = Dry信号無。コンプレッションされた信号(Wet音)のみ。
- X(Cross) = MIXコントロールはDry音とWet音をクロスフェードさせます。音量変化は最小限に抑えられます。
- II(Parallel) = 100%Dry音に対し、MIXノブでWet音を付加します。ミキシングコンソールのフェーダーでWet音をフィードする感覚で使えます。
2500はデュアルチャンネルデザインで、ステレオリンクはもちろんのこと、それぞれ別のユニットとして使用することもできます。
SECTION.2 review1 "AMS Neve 33609/N"
千阪 邦彦
この33609/Nは、なじみのある33609の最新タイプになっています。そのため少しレシオの比率に変化があるなど、より使いやすくなっているそうです。最初に触った髙山さん、コメントいただけますか?
髙山 徹
実は33609をあまり使ってきていないので、詳しくはわからないのですが、このNに付いたアタックタイムがスロー/ファストと選べるようになったのは、すごく便利になったかなという気がします。
千阪 邦彦
音色はいかがでしたか?
髙山 徹
スタンダードな印象で、強く掛けたときとそうでないときとの差は少ない方です。
千阪 邦彦
今回はバスコンプなので、マスターに掛けていますけれど、例えば何に使うのが一番いいというイメージはありますか?
髙山 徹
深く掛けても低音が削れにくい感じがするので、マスターのほかにベースなどの低音楽器にいっぱい掛けなければならないときに良いんじゃないかな。
森元 浩二.
以前はアタックが早くて、キックとかに使いにくかったんです。このスローだったら使えると思いました。
小杉 麻樹
そこは結構悩みでしたよね。
森元 浩二.
そうですね。スレッショルドも設定が低くて掛かりやすいので、使いにくいんですよね。
小杉 麻樹
「うわー、つぶれちゃったよ」とか。楽器とかに良いかもしれない。
森元 浩二.
浜田さん、どうでした?
浜田 純伸
確かにアタックタイムは使いやすくなったと思いますね。
森元 浩二.
浜田さんは普段から33609を使っていますか?
浜田 純伸
使わないです。
森元 浩二.
使わない方が意外と多いんですね。
千阪 邦彦
山口さんはよく使われるそうですね。
山口 照雄
私は30年ぐらい使っています。トータルにかけて、昔で言う、ハーフインチでやっているような感じの色が出ればいいかなと。だから、設定はもう本当にわずか、掛けても2dBから3dBぐらい。
森元 浩二.
新しい33609はどうですか?
山口 照雄
本当は昔の33609と比較したかったんです。
千阪 邦彦
せっかくこのサウンド・シティには33609/Bがあるんで、ぜひ比べてみましょう。
メディアインテグレーション
BといまのNは、トランスなどは同じパーツだとメーカーは言っています。1回、搭載しているトランスが変わったそうなんですね。それを当時の仕様に戻しています。
髙城 賢
それはすごい覚悟の発言だな(笑)。
メディアインテグレーション
僕も聴き比べたことが無いので、どう変わるかのか個人的にも楽しみです。
小林 敦
僕はラフミックスでしか使わない。
森元 浩二.
北川さん、キーストーンではみんな33609使っていませんでした?
北川 照明
うーん、それしかなかったからね(笑)。
森元 浩二.
ポリドールの人はみんな好きだという印象だったんです。そんなことはないですか?
北川 照明
でも、みんな掛けていたね。
加納 洋一郎
みんなトータルに使っているんですか?
永井 はじめ
俺はトータルじゃないところ、楽器のバスとかに使っています。
山口 照雄
33609はどのスタジオに行ってもあるので、非常に使い勝手が良いですよ。
加納 洋一郎
イメージとしてSSLコンソールには33609をトータルに挿して、NEVEコンソールにはSSLを挿すイメージがありますよね。
永井はじめ
確かに。お互いにないものを補っていたよね。
森元 浩二.
33609/Nのファストで比べるとBとでは全然違う。聴かなかったことにしましょうか?(笑)ただレベルが1dB、Nのほうが低いですね。
髙城 賢
1dBだと、33609は2dB毎のクリックだから調整しようがない。
森元 浩二.
33609/Nはスロー/ファストの両方聴きましたが、スローはすごくいいですね。
髙城 賢
スローにした方が、スレッショルドが低いの。たぶん掛かりが少ない感じ。
森元 浩二.
スローなのに33609/Bに掛かりが似ていますね。なんでしょう?
SECTION.3 review2 "WesAudio ngBusComp"
千阪 邦彦
これを触っていただいたのは小杉さんでしたね。
小杉 麻樹
僕はバスコンプって、オケのマスターにしか掛けないんです。ほぼSSL4000のコンプで、設定もほぼ決まっています。アタック、リリース、レシオも。あとはレベルだけ変えてって感じなんですよね。
森元 浩二.
その設定値を教えてほしい(笑)。
小杉 麻樹
それとの対比を聴きたいなと思ったんですけど、思ったよりもインプットの可変式THD(高域のサチュレーションを調整)を使うと、すごいハイが伸びるなというのと、アウトプットのトランスに突っ込む量で音の厚みが増すんだなというのがわかりました。コンプの掛かり方自体は、もうちょっと詰めなければならないけれど、思ったよりも早いアタックなんだなと。そこがもうちょっとベチッと残るところが、ちゃんと残ってくれると良いのかなと思いましたね。もちろん設定で何とかなると思うんですけれども。
千阪 邦彦
聴いてみた感想として、楽器やミックスなど何に向いていると言えるでしょうか。
小杉 麻樹
ピアノにちょっと使ってみたいですね。いつもだったらEQしたりマイクを変えたりするところを、このコンプの可変式THDで、少し上の帯域を付けられるなと。EQじゃないハイが足されます。
森元 浩二.
僕はトランスを通るIRONモードがすごい好きですね。コンプというよりも音色を付けるみたいな感じで。
千阪 邦彦
味付け的な。
森元 浩二.
はい。小杉さんの言っていたインプットの可変式THDも特徴的で、コンプというよりも音色を足すのに良い。
千阪 邦彦
どんな現場で使ったら良いと思いますか?
森元 浩二.
普段から使いたいです。後はDAWに挿してプラグインで設定が保存できるというは良いですね。
千阪 邦彦
それは良いですね。山口さんどうでした?
山口 照雄
私のやるジャンル的にはあまりこれは使わない。でも、変化があるからすごく良いですよね。そういうのはあんまり使っていないから。ただ、トータルにつけてやるとなると、ちょっと危ないなと(笑)。要するにどうなるかわからない。
千阪 邦彦
いろいろな味付けができちゃうから。
山口 照雄
そうそう。オリジナルからだいぶ変わってしまうから難しいと思う。
千阪 邦彦
三國さんはどうでした? ぜひ触ってみたいとのお話でしたが。
三國 浩平
味変の要素みたいなのがあるから、それを掛けていない素の音は優等生的というか、けっこうお利口な感じの音になるんだなと。そこから過激な音作りができるというか。そういう感じになっていると聴いて思いました。ただお利口な音だからといって、原音に近いのかと言われると、入れた時点で味は付いています。山口さんのおっしゃる通りで、けっこう色付け系だと思いました。
森元 浩二.
このコンプは軽くなっちゃうかな。何も設定をいじらないでコンプレッションすると、三國さんの言うようにちょっと優等生的なところがあるね。
千阪 邦彦
先ほど、髙山さんが、33609では低音がいいんだという話でしたが、低音感はどうでしたか。
髙山 徹
ちょっと温度感が減る感じがしたんです。APIっぽいんだけど、APIの方が濃いですね。
森元 浩二.
ちょっと薄いよね。
髙山 徹
ちょっと薄くなる。
森元 浩二.
可変式THDやIRONモードにしてトランスを使わないとね。だから、トランスありきなのかもしれない。
千阪 邦彦
もしかしたらそうなのかもしれないですね。味付け的なものは盛り込み済みで。
森元 浩二.
試しにIRONモードだけ使ってみましたが、アグレッシブな感じですごくいいですよね。トランスがやっぱりすごい。
千阪 邦彦
普通にコンプレッションを使ったらあっさりで、細かいところは色をつけていくという製品なんですね。
SECTION.4 review3 "SSL THE BUS+"
森元 浩二.
これは持っている小林さんにセールスポイントを。
小林 敦
配信とかの現場でトータルに入れるものがあまりないので、これ1台持っていけば、コンプもかかるし、EQ的な事もできるし、MSモードもあるのでセンターとサイドで分けてもできるので、そういう意味でとても便利に使えて良い製品だと思っています。 自宅でミックスにも使うんですけれど、リコールするのがちょっと面倒くさくて、階層が深くてちょっと裏が見えない。そこで保存できる状態だったら良いんですけれど。 音色はSSLなので、ダイナミックEQもそうだし、音作りができちゃうので、どうにでもなるというか。
千阪 邦彦
3種類の色付けできる回路(4Kモード:9段階の歪みを付加、F/B:メインのゲインリダクション、VCAからの信号をサイドチェイン信号にする、LOW THD:低域の歪みを抑える)が入っていますよね。
小林 敦
僕的に使うのは4Kモードで、歪みを聴き比べながら「どれが良いかな?」という感じで選んで使います。
千阪 邦彦
他に小杉さんも試していらっしゃいました。いかがでしたか?
小杉 麻樹
僕はFX-G384を使っているんですけれど、こちらはおとなしい印象がちょっとあるんですね。ただ歪みが足せるのは良いと思ったし、9段階あってちょっとずつ変わってくる。
千阪 邦彦
9段階のどのくらいが良かったですか。
小杉 麻樹
5~7かな。9までいっちゃうと結構強いなと思ったので、ただやりすぎそうな気がする(笑)。
千阪 邦彦
ダイナミックEQが優秀じゃないですか。いかがですか。
小杉 麻樹
EQは試さなかった。すいません。
森元 浩二.
9段階って何が変わるんですか?
千阪 邦彦
サチュレーションの感じが変えられる。
森元 浩二.
それは4Kモードを使ったときの?
千阪 邦彦
そうです。そこをもう一度試してみましょう。
森元 浩二.
なるほど。すごいですね。SSL4000系のコンプと同じくらいの効き方は、いくつくらいの値なんですか。
ソリッド・ステート・ロジック
段階的に上がっていくもので、どれが4000系に近いかというと何とも申し上げにくいのです。実際に測定してみると7段階めのところで、歪率的に1%を超えます。信号を入れると本気で歪んでいるような。音楽だとそういうふうに聴こえないと思うんですけれど、段階的にそういう歪率の上がり方をしていきます。
森元 浩二.
小杉さん的にはいくつくらいが良いんですか?
小杉 麻樹
7ですね。
森元 浩二.
結構いきますね。
小杉 麻樹
僕的には緩やかに変わっているなと感じるので。
森元 浩二.
ありがとうございました。
千阪 邦彦
バスコンプ以外でどんな使い方、シチュエーションが考えられますか?
小杉 麻樹
プラグインになっちゃうんですけれど、生のブラスとかのバスにSSLのバスコンプレッサーをよく使うので、ハイをもうちょっと足したいみたいなときにこれでやることができるのは良いなと。
加納 洋一郎
生のブラスですか? まとめて?
小杉 麻樹
うん。まとめて。
森元 浩二.
4Kモードは重要な機能ですね。
SECTION.5 review4 "Millennia TCL-2 "Twincom""
千阪 邦彦
Millenniaは中村さんに試していただきました。いかがでしたか。
中村 文俊
チューブタイプのコンプというとMANLEYが定番じゃないですか。それで散々聴き慣れていますよね。そのチューブ系のバスコンプの中で、Millenniaはどうかなという視点で聴きました。今日集められた他のコンプともちょっとキャラクターが違いましたね。Millenniaっぽい派手さもあるけれど、中低域があんまりなくならない。その感じは残っていました。パッと聴いた感じ、バスにナチュラルに掛けたい感じでしたね。ただFETとチューブとの切り替えで音作りもできる。そういう所は、個人的に他と違ってちょっと面白いなと思いました。
千阪 邦彦
このTCL-2を使うなら、どんなジャンルに向いていますか?
中村 文俊
ロックはあまり合わないかな。ロックよりも普通のポップスの方がまだ相性が良い。過激にかけて、ちょっとブレンドして、いなす感じの方が使っていて面白かった。
千阪 邦彦
TCL-2は、バスやマスターではなく、こういう楽器に合うとかってありましたか?
中村 文俊
あまりアタックを出したくはないんだけど、整えたいときに合うかなと思いましたね。Millenniaらしく、掛けていくと派手にもなるけれど、掛かった時も中低域があまり薄くならない。
千阪 邦彦
ちなみにMANLEYと比べてどうでしたか? 今回のラインナップで真空管はこれとMANLEYの2つなので。
中村 文俊
MANLEYは、トータルでいくとレンジも含めて別物です。
永井 はじめ
値段も倍も違うよね。MANLEYの方が高い。昔だと同じくらいだったよね。Millenniaはあまり上がってないんじゃないかな。
千阪 邦彦
森元さんはどうですか?
森元 浩二.
とにかくこのFETと真空管の違いを楽しむ。全く違います。
千阪 邦彦
1台で2台楽しめる。
森元 浩二.
そうですね。僕は意外とFETの方が好き。
永井 はじめ
レベルが違って聴こえるけれど違わないんだよね?
森元 浩二.
見てみましょうか。0.7dBちょっと大きい。
永井 はじめ
逆にチューブだとちょっと下がるということか。
森元 浩二.
だから、ちょっと地味に聴こえるという感じになる。
髙城 賢
FETと真空管でここまでキャラが違うなら使い分ければ良いというだけのことのような気はするけど。
千阪 邦彦
結構違いますよね。2度おいしいというか。
髙城 賢
逆に素子の違いでここまで音が違うのもあまりないので、それはそれで良いんじゃないかなと思うんですけど。
千阪 邦彦
Millenniaというとすごいクリーンなイメージがあったんですけど、意外といろんなことができるんだなという気がしました。
森元 浩二.
真空管の方が、Millenniaっぽい気がします。
SECTION.6 review5 "Heritage Audio Successor"
北川 照明
ご覧の通り、調整するツマミが限られていてすごくシンプル。ちょっとアタックを早めにして、スレッショルドだけである程度音色作りができる感じがしました。だから、当然上げていけばタイトな感じになるし、ゲインを上げても、それほど音は変わらないので、わりとイージーオペレートでした。
千阪 邦彦
NEVE 2254に近いんだよという話が雑談で出ていましたが、いかがでしたか。
北川 照明
そうかな。僕はちょっとわからないです。
千阪 邦彦
そんなお話されていた方は?
森元 浩二.
それは僕かもしれないです。ゲインを上げたときの感じが2254で上げたときと似ているなと。ちょっと野蛮になるというか粗くなる。
千阪 邦彦
33609と比べてどうでした?
北川 照明
似ているのかな。
森元 浩二.
似ている部分もあるけど、別物だと思いますよ。
北川 照明
浅いときはもしかしたら似ているかもしれないけれど、ちょっと深めにかけたら、もう完全に今どきの音でした。
千阪 邦彦
楽器に使って良いよねとお話された方がいらっしゃいましたけれど、他にどういうシチュエーションで使うのが良いのでしょうか。
北川 照明
確かにバスコンプじゃなくて、普通のコンプとして使っても良いと思う。
千阪 邦彦
ツマミもだいぶ少ないですし、ちょっと時間がない時にパパッと作る分には使いやすいのかもしれないですね。例えば楽器に使うとしたら何が浮かびますか?
北川 照明
ベースとかにも行けると思う。
千阪 邦彦
ヴォーカルはどうですか?
北川 照明
ヴォーカルも同じような感じで使えると思いますね。ただ、4dB以上掛けるとかなりガツッと変わります。そのスレッショルドのポイントがけっこう肝かなと。
千阪 邦彦
森元さんはどうでした?
森元 浩二.
僕も似たような感じです。
千阪 邦彦
中澤さんは聴いた感じどうでした?
中澤 智
いい具合に掛ければ、いろいろ使えるかな。やはり、エぐく掛けると、エぐくなるかなという印象はあります。
SECTION.7 review6 "MANLEY Stereo Variable Mu Limiter Compressor Mastering w/MS Mod & T-Bar Option"
(本文中、Variable Mu)
千阪 邦彦
Variable Muを触っていただいた下川さん、お話いただけますか。
下川 晴彦
あまり使っていない機材なんですけれど、感じたのは、これだけキャラの濃い機材たちの中で一番真面目かな。マスタリング仕様というだけあって、しっかりしていますが、そんなにがっつり音を変えるというものじゃないようなイメージでした。だからやはりマスタリング向きなのでしょう。何かの楽器というよりも、マスタリング時に最終段に入れて仕上げる。その前にEQなどをした音源をうまくトリートメントする感じなのかなという気がしました。
千阪 邦彦
どちらかと積極的に作るコンプというよりも、まとめる感じということですか。
下川 晴彦
うん。僕の印象は。
千阪 邦彦
低音感はいかがでした?
下川 晴彦
触りましたという感じはなかったかな。そのまま出ている感じで、うまくコンプレッションをかけてくれている。
千阪 邦彦
高域に特徴はあったりしましたか?
下川 晴彦
僕はその辺の特徴をあまり感じてないんですよ。だからすごくナチュラル。
北川 照明
メーターはちょっと微妙な振れというか。他の機種に比べるとクセというか針が重い感じがする。
下川 晴彦
動いていない感じがするよね。それに騙されないように(笑)。
北川 照明
他と同じように振らせようとすると、かなりオーバーコンプになっている可能性があるね。
千阪 邦彦
確かにすごいゆっくりでしたものね。この辺は、何か情報があったりするんですか?
フックアップ
特筆した事はないですね。普通のVUメーターだと。
千阪 邦彦
でも、針の動きがこのくらいゆっくりな感じがデフォルトなんですよね。
フックアップ
そうですね。
千阪 邦彦
もしかして、マスタリング仕様だからあえてゆっくりなんですかね?
森元 浩二.
マスタリング仕様じゃないモデルを使っていますが、そのVUメーターも同じような振れ方です。
永井 はじめ
掛かっているけれど振れない。
森元 浩二.
振ったときはもう遅いみたいな(笑)。
中村 文俊
初期のバージョンからずっとこれだよね。このメーターの振れに関しては。
北川 照明
でもそれを変えないというのは、なにか理由があるんだろうね。
フックアップ
ヴァリアブル・ミュー方式が関係しているんですかね。その方式が理由なのかもしれないです。
永井はじめ
でも、振ってなくても聴感上掛かっているからな。
SECTION.8 review7 "Rupert Neve Designs Portico II Master Buss Processor"
千阪 邦彦
これを試したのは加納さんです。
加納 洋一郎
よかったです。僕はどの機材も使う人次第で違ってくると思っているんですね。僕はバスコンプでも、割とパラレルコンプで使うタイプです。100%ウエットで使うことがあまりなくて。ミックスでは他のコンプも使っていますけれど、これも使っていて、結構好印象です。Porticoシリーズ、あとShelfordもそうですけれど、僕はSILKモードが付いているっていうのが一番良いところ。普段からPorticoのHAを使っているんですけれど、そこがRupert Neve Designsの武器だなと思っています。 SILKモードは、LEDがブルーとレッドに点灯する2つのモードがあって、どちらも可変で負荷を変えられるので、それですごく色付けができます。他のシリーズも2次倍音、3次倍音をつけるみたいな意味合いのところも2種類から選べて良いなと思います。 アタックも早い感じで、食いつきも良く掛かるので好印象かなと。ピアノも使えるし、ドラムも使えるし、トータルにも使える。今、この製品の特徴を見ると“マスタリング・プロセッサー”と書いてあるので、元々マスタリング用に作られた細かな調整が効いているのかなという印象です。
千阪 邦彦
加納さんは、今言われたシチュエーションで、どれが一番いいと思いましたか。
加納 洋一郎
トータルですね。
千阪 邦彦
マスタリング・プロセッサーというぐらいですからトータルだと。
加納 洋一郎
トータルで、アタックを早めにして、オリジナルに40%ぐらい足す感じですね。ただし、足し具合で位相がどこまで変わるかわからなかったけれど。
千阪 邦彦
キャラクター的にどうでしょう。ルパート・ニーブが作っている製品の中で。
加納 洋一郎
33609や2254Aやそういうイメージではないですね。別物だという印象でした。
千阪 邦彦
代理店の方はから何かコメントありますか?
フックアップ
ご好評いただいている製品で、音色は聴いてもらった通りですけれど、やっぱり精度の高さが特徴です。左右偏差の精度がハードにしては良い事が、測定上でも見受けられます。ある意味オペレートはしやすいと思います。ただメーターがLEDなので、ちょっとの誤差が出てしまうところが稀にあるんですけれど、それを除けば、メーターはVariable Muよりは精度は高いです。
千阪 邦彦
浜田さんどうでしたか。
浜田 純伸
そうですね。Rupert Neveは結構好きで使っているので、質感的にはSILKモード、特にバスコンプとして考えたときには、ブルーの方が結構効くという気がしています。
森元 浩二.
ブルーの変化はどのへんですか?
フックアップ
200Hzから300HzをQ広めであげるような、レッドはもうドンシャリじゃないですが、ローとハイをシュッとシェルフで上げて行くようなイメージのf特が得られます。
千阪 邦彦
先ほど加納さんが、33609や2254Aとはまったく別物だとおっしゃっていましたが、Rupert Neve Designsの製品に共通した特徴はあるんですか?
浜田 純伸
そのSILKモードで得られる感じですかね。
森元 浩二.
あとはしっかりした感じ、なんだろうな……PorticoもShelfordもしっかりしている。なんか昔のNEVEってもうちょっと凸凹があったんですけど、それがない感じが好きですね。かっちりして。
浜田 純伸
そこはたぶんトランスのせいだと思うんですね。
千阪 邦彦
これはどんなトランスを使っているんですか。
フックアップ
ルパート・ニーブご本人のトランス設計資料に基づいて各回路用にカスタム設計されています。また、Portico IIの2製品(ChannelとMaster Buss Processor)は、出力トランスが他と違いトロイダル・トランスを使っています。
加納 洋一郎
印象ですが、Porticoは優しいイメージです。Shelfordはちょっとカチッとするイメージ。Shelfordの方は、アウトプットを0と-6dBから選べるので、-6dBの方から抜いて、インプットをちょっと多めに入れるとかなりドライブしますよね。
浜田 純伸
Shelfordはインプットもトランスだからね。
加納 洋一郎
すごくそこが良いなと思います。
千阪 邦彦
どういうシチュエーションが合うと思いますか?
浜田 純伸
クラシカルなものまで、なんでも行けると思います。
SECTION.9 review8 "API 2500+"
中澤 智
恐縮ですが、今日、初めて触ったんです。いろいろスイッチもあって、いろんな音色に変わって、アタックを早くするともうちょっともっとエグく掛かるかなと思ったら意外と行かなかったなってイメージがありました。
千阪 邦彦
他に比べたら? それともいつも使っているコンプに比べたらですか?
中澤 智
APIらしいイメージですね。掛けると中域に歪感が出るのかなと思ったら、あんまり出ないなって。ただ、今日はトータル・コンプとしてはちょっと追い込めなかったんですけれど、ウエットからドライへと可変できるので、それでミックスしてやれば、結構ドラムとかにも入れても良いかなという印象はあります。私よりもたくさん使われている人の方がたぶんもっとわかると思います。
千阪 邦彦
普段からAPIを使っている方はいらっしゃいますか。意外にいらっしゃらない?
森元 浩二.
スタジオに2500があるので使うんですけれど、2500はミックスがないので、API独特の音が全開になっちゃう。これは混ぜられるので良い。それでも通しただけでAPIの音になりますけれどね。
加納 洋一郎
日本人にはあまり馴染みがないんですか?
永井 はじめ
エピキュラスには入っていましたよね。
髙城 賢
ただステレオ・タイプがなかったんですよ。
永井 はじめ
そうだそうだ。モジュールしかなかった。
加納 洋一郎
海外だとブラスのミックスとかパーカッション・ミックスにAPIを入れて、がっつりコンプ10dBぐらい叩いているエンジニアもいますよ。
永井 はじめ
それはすごいね。
千阪 邦彦
確かに海外のスタジオに入っているのを見たことがあるので、そういうことなんでしょうね。
加納 洋一郎
アラン・メイヤーソンとか、そういうふうに使うと言っていました。メーター振り切るぐらい振らせるんです。
永井 はじめ
それはナチュラルと混ぜるんじゃなくて?
加納 洋一郎
混ぜない。それをコントロールするって言っていました。戻ってこないようにして。
千阪 邦彦
APIは時代によって音が違うっていう話はありますけれど、今のオペアンプはどんな風に作られているんですか?
ミックスウェーブ
アメリカの工業製品なので、特性が出ていればOKという認識です。なので、2520って60年代くらいからあるオペアンプじゃないですか。中身はその時にあるパーツを組み合わせて作っているので、半導体不足と言われた時期も納期が遅れませんでしたね。
髙城 賢
なるほど。特性が一緒だったらいいと。
ミックスウェーブ
そこはディスクリートの良さでもあります。
森元 浩二.
さすがアメリカ製ですね。
ミックスウェーブ
フェンダーのギターみたいな感じです(笑)。なので、当然、時期によって音も違ってきます。それはしょうがないです。
千阪 邦彦
音の良しあしだけでなく、色々なツマミがあって、ドライ&ウエットが調整できる。いま風な使い方が積極的にできるように仕上がっているので、良いかなと思いました。
北川 照明
低域の質感が他のと違うように聴こえたんだけど。その辺がAPIサウンドなのかもしれない。平たく言うと低域がすこし少ない感じ。その分、ポップス的な意味合いが出てくるのかなと思った。だから、ラージモニターで聴いた時の、ボトムの腹に響いて聴こえる部分がなかった感じがしました。
森元 浩二.
そこはちょっと気になるので、もう一度聴いてみましょう。
北川 照明
そんなに変わらないかな。
森元 浩二.
コンプレッションしていったときに、ちょっとローがタイトになっていくという音色だと思います。ミックス出来るのはすごく良いですね。
永井 はじめ
ミックスがすごく良いですね。最初から付けてくれればよかったのに(笑)。
ミックスウェーブ
ユーザーからのフィードバックがかなりあったみたいです。
髙城 賢
最近の流行り。ミキサー卓をあまり使わなくなったからだよね。
千阪 邦彦
村上さん、聴いた感じどうですか?
村上 宣之
上げて行くと、中域の粘りががっつりと出てきます。
永井 はじめ
これ2520はいくつ入っているの?
ミックスウェーブ
2520は各chに1基入っています。2520もそうなんですけれど、カスタムでトランスを作っているので、それと合わせての相乗効果があります。
千阪 邦彦
昔のトランスやオペアンプと互換性はあるんですか。
ミックスウェーブ
ものによります。要はヴィンテージのオペアンプを載せ替えることは僕も何回も試したんですが、やっぱり音は違うんですよ。それは経年劣化もあるでしょうし、使用しているパーツが違う事もあるので、その辺はいたちごっこみたいな感じです。でも、それは正しい事だと思うので、サウンドがすべてという中においては。ただ代理店としては、自己責任でお願いします。
SECTION.10 各社のメインテナンスについて
注:今回試聴したブランドに限りますので、他ブランドに関してはこの限りではありません。
メディアインテグレーション
AMS Neve
故障個所によりますが、基本的に国内で対応します。旧モデルに関しては、オーバーホールを受け付けますが、パーツ次第となります。最新モデル33609/Nに関しては、現在まで国内対応で済んでいます。
アンブレラカンパニー
WesAudio
基本的に国内の技術スタッフが対応します。
ソリッド・ステート・ロジック・ジャパン
SSL
すべて国内の技術スタッフが対応します。一部の製品に関しては良品交換となるものがあります。旧モデルに関してはご相談ください。
タックシステム
Millennia
基本的には国内の技術スタッフが対応します。ある程度のパーツを在庫していますが、取り寄せを行う場合もあります。
フックアップ
Heritage Audio
MANLEY
Rupert Neve Designs
メーカーによって対応は異なりますが、基本的には国内の技術スタッフが対応します。パーツに関しては、メーカーの指示を仰ぎながらストックを持つなど準備しています。故障個所によりますが、旧モデルも対応します。なお、Heritage Audioに関しては、やや時間が掛かります。
ミックスウェーブ
API
9割以上、国内修理で済んでおり、パーツに関しても十分なストックを持っています。旧代理店取扱製品及び並行輸入品に関しては修理対応不可となることをご了承ください。