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JAREC著作隣接権勉強会「アメリカにおけるサウンド・エンジニアの権利、 レコード会社、音楽配信事業者、ヴェンチャーと日本」#3

UPDATE
2024.10.24
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OUTLINE 概要

JAREC著作隣接権勉強会を全6回に分けて掲載いたします。<第3部>
日時:2024年3月21日(木)15:00~17:00
会場:東放学園音響専門学校 清水橋校舎2F 2S1教室
講師:榎本 幹朗 氏
内容:
・第1部 MMA/AMAで認められたプロデューサー / エンジニアの権利の実際
・第2部 SoundExchangeとメジャー・レーベルの関係
・第3部 日本における可能性 -SoundExchangeとAMAの事例を日本で活かすには-
・第4部 定額制音楽配信事業者のビジネス構造 -Spotifyに支払う余裕はあるのか?-
・第5部 サウンド・エンジニア系のヴェンチャー動向 -「第三の道」として、隆盛するクリエイターズ・エコノミーに焦点を当てたサウンド・エンジニア系のヴェンチャービジネスについて-
・質疑応答

SECTION.1 第3部 日本における可能性 ーSound ExchangeとAMAの事例を日本で活かすにはー

榎本 幹朗__
 ここで、日本市場で参考になることを1回まとめます。
 アメリカではAMA(Allocation for Music Producers Act)によって、ネット・ラジオ、衛星ラジオに関しては、すでにサウンド・プロデューサーの権利を認められています。そして、MMA(Music Works Modernization Act)によってストリーミング事業者(音楽サブスクリプション)を対象に、サウンド・エンジニアの権利がいずれ認められると思います。すでに著作権料の徴収から分配のところで、プロデューサーの権利が認められていますからね。そして「なぜネットラジオだけサウンド・エンジニアの権利を認めて、ストリーミングは認められないの?」ということになるでしょう。
 細かい話をすると、インタラクティブ配信(音楽サブスク)は録音権と演奏権があって、非インタラクティブ配信(ネット・ラジオ、衛星ラジオ)は演奏権のみと筋が通ってない。ですから、たぶん非インタラクティブ配信でも、録音権が認められるようになると思います。

 さて、ここで正直に言います。いますぐに日本でサウンド・エンジニアの権利獲得に動いても実現は難しいと思います。そして、最後の部分でサウンド・エンジニアはこうした方がいいのではないか、という私の考えを詳しくお伝えします。
 もちろん、本格的に動くとしたら日本もMMAのように、サウンド・エンジニアの権利が認められるのを狙った方がいい。それまでに非インタラクティブ配信でのサウンド・エンジニアの権利を認めてもらうのが、一番良いと思います。つまり、ネット・ラジオや衛星ラジオですね。しかし、先ほど話したように、日本はすごく規模が小さいし、既にradikoやレーベル、著作権管理団体で話がついているので、すぐに決まらないと思います。
 そうすると、radikoが頑張ろうとしているところやポッドキャストが大事になってくるわけです。そこで「一緒に協力しますから、権利を認めてもらえませんか?」みたいな話をする隙間が少しはできるんじゃないかなと思います。もしも、日本でSound Exchangeみたいな団体を作ろうとしたら、音楽番組をポッドキャスト化して配信したいけれど、いまの著作権法だとネットで音楽番組では事実上できないという課題が大事になります。
 今のポッドキャストは、ストリーミングではなくダウンロードなので使用料がとても高い。また、売り上げの基本は広告ですが、それをダウンロード使用料で払おうとしても絶対無理です。それでは進まないので「ポッドキャストやオンデマンドの番組配信に関して、きちんと取り決めを作りませんか?」「著作権法を改正して、アメリカのSound Exchangeに近いものを作ったらいいんじゃないですか?」という方向に話が進むと、いまのradikoのポッドキャストやオンデマンド配信に当たります。なぜこれを話すのかというと、僕はラジオ局さんと仕事をすることがあるのですが、話を聴くと、ラジオ番組で音楽を流すじゃないですか、音楽を付けたまま流したいですよね。そこで「お金払いますから、認めてください」とレーベルに言ってもダメといわれてしまうそうです。ラジオ業界全体でその点が解決していないので、自分達が良いと言っても、他の人たちとの兼ね合いがある、みたいになってしまう。それでもやらなければいけないということになれば、radikoは電通の方が主導して作りましたし、ポッドキャストがストリーミング化される時点で、放送局と電通が主導すれば、Sound Exchangeみたいな機能を認める法律が日本の場合はできると予想しています。


ーーー> 第4部へ続きます。