SPECIAL
TITLE タイトル
JAREC「DigiLink I/O試聴会」
- UPDATE
- 2025.06.05
OUTLINE 概要
2024年12月18日(水)、LUSH HUBにおいてJAREC「DigiLink I/O 試聴会」を開催いたしました。
試聴用スピーカーには「PMC 6-2」、「Focal ST TRIO 6」、ヘッドホンはソニー「MDR-MV1」「MDR-M1ST」を使用いたしました。
各代理店担当者様の説明と、参加者の感想、質疑応答など試聴会の様子を是非ご覧ください。
この試聴会をふまえて、2025年3月10日にA/D-D/Aを比較するための生演奏収録も行っています。
ご協力いいただきました企業様、参加者の皆様ありがとうございました。
SECTION.1 製品のご紹介
●株式会社メディア・インテグレーション MI事業部
・Apogee Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis with 16 Analog In + 16 Analog Out
https://www.minet.jp/brand/apogee/symphony-io-mkii-series/
・Focusrite RED 16Line
https://www.minet.jp/brand/focusrite/red-16-line/
●Antelope Audio
・Galaxy 32 Synergy Core
https://jp.antelopeaudio.com/products/galaxy-32-synergy-core/
●株式会社フックアップ
・Lynx Studio Technology AURORA(n) 8 - HD2
https://hookup.co.jp/products/lynx-studio-technology/aurora-n/prices
・Universal Audio Apollo X | Gen 2
https://hookup.co.jp/products/universal-audio/apollo-x8p-g2
●ミックスウェーブ株式会社
・Prism sound ADA-128
https://www.mixwave.co.jp/p_audio/item/prism-sound/dream-ada-128.html
SECTION.2 各社製品説明
Chester
今日はDigilink I/Oを集めて比較試聴/検討をします。おそらく国内販売のものはほぼ揃ったと思っています。これだけのI/Oを同時に聴くという企画は、世界的に見てもなかなかないチャンスだと思います。
モニタースピーカーは、PMCのスピーカー6-2とFocalのスピーカーST TRIO6の2種類を切り替えて聞いています。他にヘッドフォンもソニーの協力で、MDR-MV1とMDR-M1STを用意しました。音源は、以前、スタジオformで録音したバンドの曲を用意しています。これはセッション・ファイルなので、ボーカルだけ、ギターだけと言う聴き方もできます。
試聴は、最初に皆さんにAVIDのHD I/Oをリファレンスとして聴き、そこから各モデルを比べて聴いていきます。なお、各機種の音量を統一しようとしたのですが、うまくできなかった。その差も本体の特性と言う風に捉えて聴いていただくという事にしようかなと思っています。
まずは各試聴モデルについて、どんな製品なのか、輸入代理店の方に説明していただきます。
株式会社メディア・インテグレーション


メディア・インテグレーション・佐藤
FocusriteのRED 16 LineとApogeeのSymphony I/O MKⅡをお持ちしました。 RED 16 LineはDante、Thunderboltを標準搭載した16in/16out。そして、ADAT、SPDIF搭載のオ―ディオインターフェースになっています。値段は630,000円(税込)Danteとアナログの変換、ADATとDanteの変換が簡単にできますので、MTRX Studioが出る前に、選択肢としてよく考えられていたデバイスです。今でもイマーシブへのワークフローまで1台で完結するということで、多くの方にご購入いただいております。 ApogeeのSymphony I/O MKⅡですが、発売当初の音をイメージしていると今日は印象が変わると思います。理由は2023年にAD/DAのカードがアップデートされ、SE(Special Edition)モデルになっているからです。アップグレードしたAD/DAですが、正方向、負方向でDACが分かれているデュアルDACという仕組みになっています。
Chester
RED 16 Lineは、AES/EBU端子は付いていますか?
メディア・インテグレーション・佐藤
AESは付いていません。Danteにて拡張する必要があります。
Chester
Symphony I/Oは、スロットに何を挿すかで値段がかなり変わりますよね。
メディア・インテグレーション・佐藤
はい。一番シンプルな組み合わせで902,000円(税込)になります。この試聴で使われるところだけなら902,000円なんですけれど、今日はデモ機なのでフルスペックになっています。この構成だと2,300,000円(税込)です。※価格は2025年5月時点の情報です。
ミックスウェーブ株式会社

ミックスウェーブ・田島
これはアナログ/デジタルの入出力を128chまで搭載できるというところが特徴のAD/DAコンバーターです。主な特徴としてはオプションカードを4枚まで搭載でき、4基の独立したクロック・ドメインを持たせることもできます。様々な制作環境を、この1ユニットで制御することができるというのが特徴になります。解像度の非常に高い製品になりますので、ぜひ聴いていただければと思います。
株式会社フックアップ


フックアップ・秋本
弊社はUniversal AudioのApollo X|Gen 2と、Lynx Studio TechnologyのAURORA (n)8-HD2をお持ちしました。 AURORA (n)8-HD2は、カスタム可能なモデルで、アナログは8×4の最大32chのin/outを設けることができたり、拡張カードでAES/EBU、モニター専用のモジュールも出ています。また、D-subは、ブレイク・アウト・ケーブルを用意する必要があると思いますが、このモデルはTRSフォーンを直接挿せる構成のカードが出ています。 トピックとしては、SynchroLock2という機能がありまして、かなり精度の高いクロックを搭載しています。大体7ppmぐらいの精度補完をしています。 もう1モデルは、Universal AudioのApollo X|Gen 2をお持ちました。2024年10月にGen 2になりました。6年ぶりのアップデートになります。スペックも変わっていますし、ラックモデルだと、ヘッドフォンでモニタリングする場合を考えてスペックが良くなっているのですが、もちろん他の部分もかなりグレードアップしています。内部にDSPを搭載しており、PCパワーに依存せず色々なプラグインを使えたり、最近ですとSoner Worksと連携して、リファレンスIDのプロファイルを読むことができるようになっています。トータルで便利なインターフェースになったと思っております。
Antelope Audio

Antelope Audio・小長谷
今日はAntelope AudioのI/Oの最上位モデルGalaxy 32をお持ちしました。このGalaxyにはGalaxy 64という64chタイプもありますが、1Uの32chを持ってきました。特徴ですが、Antelope AudioのラインナップにあるIsochrone Trinityというクロックがあるんですが、そのクロックと同じタイプが入っています。昔から音の傾向はあまり変わっていないのですが、AD/DAは変わっている感じですね。ちょっとローの表現力が上がっていると個人的には感じています。 1Uで32in/32outで、端子もDante、MADI、SPDIFが付いているのですが、AES/EBUは付いていません。また、Galaxyは特殊なデバイスになっていまして、普通にHDXで繋ぐこともできるのですが、Thunderbolt端子も同時に使えるので、2台のPCで1台を動かすというユニークな動作をさせることもできます。さらにDanteやMADIも同時に使えます。分岐すれば、Danteの場合はDVSで3つめのPC、もしもMADIインターフェースがあれば、4つめのデバイスということで、1台のGalaxyで4つのPCをすべて独立して動かす事ができます。 他の特徴として、消費電力が低いため、スタジオ内に置いても大丈夫なので、ファンレスになっています。そして、最近フォーカスされるのは、イマーシブ対応ですね。これは最大16ch=9.1.6まで対応しています。フロントのディスプレイに使用しているch数を示す項目が表示されています。なおかつ、スピーカーキャリブレーション用のEQとディレイがあります。また、FPGAで動いているエフェクトがあるので、例えばHDXでコンピューターに入る前に、内部的にエフェクトをかけて掛け録りする。そういう機能も使えるようになっています。
SECTION.3 試聴を終えて
Chester
これで2モデルのスピーカーで全機種聴き終わりました。ヘッドフォンで聴かれた方もいらっしゃいましたね。それではご感想をいただけますでしょうか。まずは岡部さん。
岡部 潔
集めたモデルはどれもよかった。個人的にどれが好みかと言うと、Antelope AudioとPrism Soundでした。Antelopeはバランスが良くて、トランジェントが良い感じがしました。Prism Soundもバランスが良くて、ハイファイ感や奥行きがあると感じましたね。
Chester
Antelopeは、セットアップに合わせて価格も変わる?
Antelope Audio・小長谷
セットアップは無いです。1Uインクルードです。
岡部 潔
インプットchは?
Antelope Audio・小長谷
32in/outです。Galaxyには64chと言うタイプもあります。それはGalaxy 32が2台くっついた2Uのモデルでアナログ64in/outになっています。ただ、64chモデルは、受注生産で価格も200万円くらい。導入先としてロサンゼルスのとあるスタジオなどがあります。
岡部 潔
Prismのコントロール・ソフトというのは、別にあるわけですよね。
ミックスウェーブ・朽木
LANケーブルでPCに繋いでいただくと、ブラウザでコントロールできるようになります。ブラウザで表示されるものは、フロントパネルと同じです。
Chester
Prism Soundは、何inですか
ミックスウェーブ・朽木
オーディオ・パスが128あるので、カードによって64in/outでも良いですし、128を全部入力にしても良いです。
森元 浩二.
カード1枚はいくらくらい?
ミックスウェーブ・朽木
だいたい50万円くらいです。今回持ってきているデモ機にはカードを挿した状態で200万円超えます。
森元 浩二.
どんな構成なんでしょうか。
ミックスウェーブ・朽木
AES 8in/outのHDXです。
Chester
Danteでは最高どのくらいのch数になるんですか?
ミックスウェーブ・朽木
カードにもよりますが、HDXカードは64in/outです。ポートが2つあるので、プライマリで1つが32ch、もう1つが33chから64chということになりますね。
Chester
北川さんはどうでした?
北川 照明
僕は個人的にFocusriteとAntelopeだね。Focusriteは、高域がちょっと出ているかもしれないけれどよかった。音に勢いを感じるし、バランスも良い。Antelopeも音に張りがあって、バランスも良かった。
Chester
僕も実はFocusriteは聴いてびっくりで、すごく良い音がしていると思いました。でも、けっこういいお値段ですよね?
メディア・インテグレーション・佐藤
今回の並びだと一番安いと思います。Focusriteは、AKM(旭化成マテリアル)からシーラスロジックというアメリカ製のリスニング向けDACによく搭載されているチップになったんです。それになってじゃじゃ馬のような所が抑えられて、サウンドが変わりました。
高城 賢
Focusriteは、基本的には低域にしまりがあって、高域が綺麗になって空気感があるため、聴こえ方が穏やかになったように聴きました。そこはわかったけれど、ここはイベントスペースなので、コントロールルームで聴いてみたかった。僕としては、Focusriteはどこで聴いても、きついなと感じる帯域があります。イメージ的には歌が凹んで聴こえちゃうので、声をメインに聴いているとちょっと気になるかもしれない。
北川 照明
その感じは僕も感じた。シビアに聴き比べるんだったら、同じ音圧で出ていない点もあると思うけれど、高城さんも言っているようにボーカルが引っ込んで聴こえた。ボーカル物のミックスやるときは、これだけ違うとちょっと困る場合もある。そういう意味では、スネアの音色もけっこうI/Oによって変わりますね。
Chester
スネアはどれが良かったですか?
北川 照明
良しあしではなく、森元くんが作った元の音源と比べて、スネアのバランスが大きくなって聴こえていると思うんだ。歌がひっこんで聴こえるな、とイメージしながら聴いていました。
森元 浩二.
今回の曲はPrism Soundで落としているのですが、全然違う。今日のラインナップになりますけれど、僕はAVIDのMTRX IIかな。
Chester
なんでPrism Soundを使われたんですか。
森元 浩二.
Prism Sound AD8を買った時、まだMTRX IIがなかったんです。
Chester
川澄さんはどうでしたか。
川澄 伸一
HDXでもMTRX IIになると、これだけ音が違うんだなと。全体的には音の変化は、やっぱり価格のお高い方が良いと感じました。
Chester
値段に比例しているという感じですね。
川澄 伸一
そういうものなのかなとちょっと思ったんです。それと私はProToolsと他のDAWが混在しているスタジオの場合、I/Oは共通させた方がいいと思っていて、そういう使い方を考えた場合のチョイスはどれになるのかなと。
メディア・インテグレーション・佐藤
この中でHDXとnative / Core Audio接続の切り替えができないモデルは、、Lynx StudioとUniversal Audioだけですね。他はHD3 Accel以降すべて対応できるようになりました。
川澄 伸一
なるほどね。僕はLynx Studioの音は自然な感じで好みでした。
Chester
この試聴会が始まる前に、全モデル内部クロックを使っているので、クロックを統一しても良かったかもねと話をしていたんです。それができたらなと思いました。そこから考えると、Antelopeは、なかなか精度の良いクロックを積んでいるんだなと思いましたね
岡部 潔
ルビジウムも入るんだっけ?
Antelope Audio・小長谷
10Mのワードクロックなら他社のクロックでも入ります。オーディオ界隈ではいないと思いますが、GPSからクロックもらうこともできます。
岡部 潔
うちはルビジウムを使っているよ。
Antelope Audio・小長谷
キング関口台スタジオは、たしかマスタークロックにAntelope Audioの10Mを入れてくれています。
浜田 純伸
私も皆さんとほぼ同じ印象で、とりわけこれと言えないのですが、やはりAntelope Audioのクロックは、前にいたスタジオでも使っていたので、気持ち的にはその印象がありました。どれもそれぞれに特徴があるけれど、昔に比べると全体的にいろんな意味で相当良くなっていますね。
岡部 潔
UADは、前に借りていた時とイメージが全然違うのでいいなと。ネイティブでならこれも選択肢の中に入るかもしれません。
Chester
確かにUADの色があるんですけれど、僕も昔のイメージと全然違いました。ずいぶんよくなった。
murozo
僕も全部いいなと思って。僕はリズムをタイトに作る事が多いので、リズム中心に聴いていました。その中では、Lynx Studioはパンチがあって、自分がよく関わるヒップホップなど現代的なジャンルに適した音だと思いました。Antelopeは、説明でも最大4台まで使えるという。そういう所も含めて良いなと思いましたね。音も現代的で、高域はシャープでとてもクリア、中域はボーカルが少し前にくる感じがあり、低域もタイトで力強く良い印象を受けたI/Oでしたね。
Chester
僕もLynx Studioは好印象でした。
森元 浩二.
Lynx Studioは、いまいくらなんですか?
Chester
資料で見ると50万6千円。現代的という話がありましたが、僕もそうかなと思いました。
吉田 保
チャンネルあたりのコストパフォーマンスがおいくらかも大事なポイントです。Prism Soundさんはとびぬけて高いけれど、ヨーロッパ系の音がしていたと思いますね。厳密にいうと、音圧を揃えてピークノイズ感なども聞いてみないとわかりませんが、音圧によってだいぶ感じ方が違うと思うんですよね。今日の試聴モデルの中で、私個人の印象としては、アメリカのメーカーとヨーロッパ系のメーカーとが、各々その印象が出ているなと聞きました。厳密に聞きたいのであれば、是非ともRock oNの店頭で聴いていただくのがいいんじゃないかと思います。 ありがとうございました。


SECTION.4 A/D-D/A比較試聴
ここまで、沢山のエンジニアにお言葉をいただきました。しかし、いずれも出力(DAC)の音しか聴いていないということで、東放学園のスタジオを借りて1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの4重奏曲を元に入力時の音の印象を聞きました。なお、日程の都合上、Avid MTRX IIとApogee Symphony I/O MKII、Focusrite RED 16Line、Antelope Audio Galaxy 32の4モデルとなりました。ここでは皆さんからどんな声が寄せられたのか、匿名になりますがお伝えしたいと思います。
Avid MTRX II
・音の立ち上がりが早くレンジも広く感じた。
・音像がまとまっている印象。素直な音なので、仮にEQ処理を行う場合でも迷いなく行う事ができると感じた。
・今回は上から下まで出ている製品が多いと思ったのですが、その中では角が取れている音だと思いました。
Apogee Symphony I/O MKII
・中低域に目立つところがあると思いました。ヴァイオリンの音がまとまっていて綺麗に聴こえました。
・Apogeeらしい。バランスも良く広がりがある聴きやすい音色だったような気がする。
・音像のバランスが良い。中域から高域のまとまりがあり過度なピークを感じることがなかった。中域に音が粘るような印象を受けた。
Focusrite RED 16Line
・MTRX IIと比べて、全体的に硬い印象。中高域(体感的には7kHz)あたりにピークを感じ、多少聴きづらい印象を受けた。音の密度もMTRX IIに比べ薄い印象があったが、音の立ち上がりは速い。
・明るい音だと思いました。ヴィオラやチェロが綺麗に聴こえると思いました。音の定位や動きがわかりやすい。
・DAの試聴でも、バランスが良く聴こえたが、AD/DAでも同様バランス良く聴こえました。バランスは良いですが超低域や超高域が薄いかもしれない。
Antelope Audio Galaxy 32
・他とは違う設定? と思うほど、リヴァーブが多く聴こえ、中低域から下が充実して聴こえた。流行りの音色ですが意外とジャンルを選ぶI/Oかもしれない
・今回試聴したI/Oの中では一番派手な印象を受けた。中域の存在感が強く感じられストリングスの弦の擦れる音「松脂感」を強く感じた。今回は全てのI/Oの入力レベルを同じに設定しているにも関わらず、このモデルだけ音量が大きく感じた。ジャンルによっては選択肢になり得るI/Oだと感じた。音の立ち上がりがとても速い。
・音が綺麗になりすぎないリアルなニュアンスを感じました。小さい音と大きな音のニュアンスが一緒でないというダイナミクスがあるように感じました。
